野村克也『あぁ、監督』（角川ONEテーマ21）

一気に読んだ。時の人野村克也の監督論である。第2章「私が見た『名監督』た
ち」がおもしろい。「名監督」として取り上げられているのは、星野、西本、上
田、古葉、広岡、森、王、鶴岡、三原、水原、川上（ページ順）である。長嶋、落
合は含まれていない。いずれもなるほどと思われる「分析」である。

私はＶ９時代の巨人ファンだった（－－今は巨人ファンではない。）ので川上哲治
さんを尊敬しているが、個人的には西本幸雄さんが好きだ。西本さんは頑固な熱血
漢だった。スパルタ教育で鉄拳をふるうこともしばしばだった。阪急監督時代には
選手に自分の信任投票を実施したこともあった。不信任が4票いたということで辞
任を申し出たがオーナーに慰留された。

西本さんは大学時代私の父と同期だった。昭和40年代だったと記憶しているが、私
の父が同期会で「巨人はどう？」と声をかけたら、「いやー、（なかなか）勝てな
いよ」という返事だったらしい。私は西本さんの、この正直さが好きだった。

古くは、大毎対太洋の日本シリーズで、（大毎の）ミサイル打線にバントをさせた
ことで、永田オーナーと大喧嘩、とうとう監督辞任となった。

近鉄の監督時代には、しつこく言ったにもかかわらず羽田（はだ）がサインを見逃
したというので試合中に鉄拳制裁をふるった。－－「いやー、あの時は・・・・・・」と
いう西本さん本人の話をテレビで聴いたことがある。とにかく情熱家だった。

監督引退となった近鉄対阪急最終戦で両選手から胴上げをされたのも有名な話だ。
私が兵庫県宝塚市に住んでいた時は、時々引退後の西本さんの姿をお見かけしたも
のだ。