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人生ブンダバー

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川田稔『昭和陸軍全史』(講談社現代新書)

2015-08-20 05:00:00 | 近現代史

遠山茂樹・今井清一・藤原彰『昭和史』(岩波新書)は、受験時代に
読んで参考になった。この本は、昭和30年の初版刊行時、「人間が
描かれていない」と亀井勝一郎が噛みついて、「昭和史論争」となっ
た。初版本は絶版となっている。


それはともかく、本書では、戦前、とくに満州事変以降を主導した陸
軍軍人「個人」の考え方と行動を、事実、史料に基づいて、「1.満州
事変」、「2.日中戦争」、「3.太平洋戦争」と新書版3冊、約1150
ページにまとめた力作である。

最初から1150ページを読みなさいと言われたら読めなかっただろう
(笑)。

著者は、全3巻後記で、「これまでの研究で、政治的軍事的な決定や出
来事の事実関係については、ほぼ明らかになっている。そこで、本シリ
ーズでは、そのような研究をベースにしながら、この時期をリードし
た軍人たちの戦略構想、彼らが何を考えていたのか、を中心に検討した。
そのことによって、太平洋戦争へ至る経緯について新たな角度から光を
あてることができるのではないかと考えたからである」と述べている。

 (注)満州事変は、関東軍の独走(板垣、石原)と言われたが、本書
   では陸軍中央の内訌があったという「事実」を紹介している。

代表的人物では、永田鉄山(1884~1935)、石原莞爾(いしわらかん
じ;1889~1949)などの戦略構想が紹介されている。


「東京裁判」では、A級戦犯として、7人が死刑となった。7人のうち文
官の広田弘毅を除いた6人はすべて陸軍軍人だった。

「東京裁判」は、「勝者による裁き」という面がないではないし、海軍
が陸軍に責任を押し付けたという見方もできなくはないが、本書(に書
かれた歴史的事実)を読むと、やはり、陸軍首脳部(--「軍国主義者」
というと価値判断を含んだ言葉になってしまうが・・・・・・。)の責任は重
かった、と言わざるを得ない。


戦後70年を記念すべき1冊(3冊?)と言っていいのかもしれない。





(参考)
第1巻<目次>
プロローグ 満州柳条湖鉄道爆破
第1章 満州事変の道
1 昭和初期政党政治と陸軍
2 張作霖爆殺事件後の政治と宇垣派の陸軍掌握
3 一夕会の形成
第2章 満州事変の展開--関東軍と陸軍中央
1 柳条湖事件までの陸軍中央
2 関東軍の軍事行動と陸軍中央の内訌
3 満州統治をめぐる対立--独立自治政権か独立国家か
第3章 満州事変をめぐる陸軍と内閣の暗闘
1 朝鮮軍独断越境と若槻内閣
2 内閣・陸軍首脳部関係の安定化と国際環境
第4章 満蒙新政権・北満侵攻・錦州攻略をめぐる攻防
1 満蒙独立新政権の問題
2 北満進出と錦州攻撃をめぐる対立
第5章 若槻内閣の崩壊と五・一五事件
1 若槻民政党内閣の総辞職--安達内相による倒閣
2 犬養政友会内閣の成立と荒木陸相の就任--陸軍における権力転換
3 五・一五事件の衝撃--政党政治の終焉
4 国際連盟脱退と熱河作戦
第6章 永田鉄山の戦略構想--昭和陸軍の構想
1 国家総力戦認識と国家総動員論
2 常備兵力と戦闘法
3 国際連盟批判と次期大戦不可避論
4 資源自給論と対中国政策
第7章 石原莞爾の戦略構想
1 世界最終戦争と満蒙
2 満蒙領有と日米持久戦争
3 対米持久戦争計画について
4 永田構想と石原
エピローグ--満州事変から日中戦争・太平洋戦争へ


<年表>
昭3/1928 張作霖爆殺事件
昭4/1929 田中内閣総辞職/浜口内閣(第2次幣原外交・井上財政)
昭5/1930 ロンドン軍縮会議/浜口首相狙撃事件
昭6/1931 3月事件/第2次若槻内閣/中村大尉事件/満州事変/
       10月事件/犬養内閣
昭7/1932 満州国建国/5・15事件/斎藤内閣/リットン報告書
昭8/1933 国際連盟脱退


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