人生ブンダバー

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サムエルソン『経済学』

2020-06-19 05:00:00 | 読書

例によって、部屋を整理していたら、サムエルソン『経済学』が出
てきた。学者になる人はすべて天才だが、経済学分野におけるサム
エルソン(サミュエルソン)こそ「天才中の天才」だ。

いわゆる「ノーベル経済学賞」が設けられたのは1968年だ。第1回
は、1969年、ノルウェーのラグネル・フリッシュ(1895-1973)と
オランダのヤン・ティンバーゲン(1903-1994)に与えられた。

第2回、1970年に受賞したのが、米国のポール・サミュエルソン
(1915-2009)だ。

そもそもノーベル経済学賞はP.サミュエルソンのために設けられた
というウワサがあった。


サムエルソン『経済学』(都留重人訳、岩波書店)は、大学生の経
済学教科書として、日本だけでもおそらく毎年5万冊(セット)は
売れただろう(仮に印税10%=300円と仮定すれば、1,500万円/年
規模か?)。

これこそ「いい物を作れば(創作すれば)売れる」という資本主義
の精神にほかならない。


サミュエルソンは、1947年に『経済分析の基礎』という博士論文を
出版。経済理論を数学(という「言語」で)で展開している。

サムエルソン『経済学』第1版が出版されたのは1948年だ。日本で
都留重人訳が登場したのは、第6版(1964年。都留重人訳1966年)
からだ。

スティグラーによれば、サミュエルソンは、『経済分析の基礎』に
よって名声を、『経済学』によって富を得たと言われている。


サミュエルソンは「超天才」なので、何でもパッと理解してしまう
のだろう。1957年には「賃金と利子--マルクス経済モデルの現代
的解剖」、1959年には「リカード経済学の現代的分析」という論文
を書いている。

手元にある原書第8版第2章では「労働価値説(本論をはなれて)」
でカール・マルクスの労働価値説をさらりと論駁している。労働価
値説は、カール・マルクスが古典派のアダム・スミス、デーヴィッ
ド・リカードから発展的に受け継いだものだが、経済学的にはそこ
がウィーク・ポイントであり、その延長線にある資本家の「搾取」
の理論も怪しくなってくる。
(小泉信三博士も70年以上前にマルクスを評価しつつ、この点を批
判している)。


前述のように、サミュエルソンは1970年にノーベル経済学賞を受賞
したが、翌1971(昭和46)年に慶應義塾の小泉基金より招請され、
来塾した。私も学生として、三田の西校舎大教室で行われた講演会
を聴きいったが、当時同時通訳があるはずもなく、前列に陣取って
おられた先生方、院生などからサミュエルソンのユーモアに笑い声
が起こったが、私には何のことだったかまったく分からなかった思
い出がある。

ちなみに、同じ大学生でも、出来る人は、原書と見比べながら、都
留重人訳を勉強していたという。



根井雅弘『サムエルソン』(中公文庫)


サムエルソン『経済学』(岩波書店)
なぜか上巻が原書第8版、下巻が第9版を所蔵している。
あらためて読んでもおもしろい。


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