書棚の整理を少しずつ続けている。継続は力なり?
東大教授だった林健太郎を知ったのは、昭和40年代前半、山川の高
校教科書『世界史』の著者の一人としてだった。
次に、昭和43(1968)年、東大紛争時の文学部長として全共闘に屈
しなかったということで有名になった(「林健太郎監禁事件」。当
時55歳)。
その後、昭和44年、予備校一橋学院時代、羽生という日本史の先生
が、「昭和20年のソ連参戦に『日ソ中立条約に違反して』という文
言を教科書には書く必要はない。林健太郎先生は書くべきだと言っ
ていますが・・・・・・」という説明で強く印象に残った(林健太郎が共
産主義に批判的だとは、当時の私は知らなかった)。
学生時代、岩波新書の『世界の歩み』を読んだ。これは、昭和24~
25年に出版され、版を重ねていたものだ。
次は、『歴史と体験』(文藝春秋社、人と思想シリーズ)だ。昭和
48(1973)年に購入したが、これはおもしろかった!
その頃、林氏は東大総長になった。
本書については、またあらためて・・・・・・。
林健太郎の著書は、その後も何冊か読んだ。
今回取り上げる『歴史からの警告』(中公文庫、H11[1999]刊)
は、著者が72歳から10年間に書いたものをまとめた本だ。
「西洋史学者」らしく、時事問題の発言であっても、短期の事実分
析と長期的、世界史的な視野を持ち、アカデミックな筆致で書いて
いる。現代史の資料としても有用ではないかしらん。
<目次>
Ⅰ
「倨傲(きょごう)の宗教」の終焉
パリ憲章と「ヨーロッパ共同の家」
革命はその子を貪り食った
日本共産党の天皇批判の批判
今日の世界状況と小泉信三
小泉氏がここ(「再び平和論」)でくり返し説いたことは、平和というもの
はただ平和、平和と口で言うだけでは達成されないので、平和を破るような
行為を阻止する手段を講じることが必要なのだということであった。そして
またその当時の世界の中で、平和を破るおそれがあるのはソ連を頭目とする
共産勢力であるということであった。・・・・・・我々は今から四十年前に、この
ような誤れる平和論を完膚なきまでに論破していた先覚者小泉信三がいたこ
とを改めて想起し、常にそれに学ぶことを忘れてはならないのである。
(注)今日であれば、平和を破る可能性のあるのは北朝鮮???
Ⅱ
両世界大戦原因の考察
「奥野大臣発言」の問題性
戦争責任というもの
一九二三年という年
湾岸戦争と日本国憲法
「東京裁判史観」論議
フィリピン、ビルマの独立と日本の大陸進出について
歴史の事実と解釈
中国ナショナリズムと国際共産主義
Ⅲ
日本政治の自殺
「永野法相発言」を考える
村山政権の成立とその批判
『歴史からの警告』
本書は「戦後50年」前後に書かれたものだ。
いささか横道にそれるが、戦後70年首相談話(→こちら)はバラン
スがとれていてよかった。
戦前の日本がおかしくなったのは、昭和6(1931)年の満州事変か
らと言っていいかしらん。
そもそも論でいえば、「首相談話」を出さずとも、平和条約(や日
韓条約)を締結した時に、終わっているはずだが・・・・・・。
以下は、今までに取り上げたものもあるかな?
『世界の歩み』(上・下)(初版S24[1949]、S25[1950])
左から
『ワイマル共和国』(初版S38[1963])
『両大戦間の世界』( 〃 S44[1969]→S51[1976])
『昭和史と私』( 〃 H4[1992])
この3冊はいまでも価値が失われていない。
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