<目次>
Ⅰ.ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団演奏会
Ⅱ.すずきじゅんいち監督『442日系部隊 アメリカ史上最強の陸軍』
Ⅲ.アリババと15人の盗賊 第22回リサイタル
Ⅰ.ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団演奏会
11月15日(月)、都民劇場(東京文化会館大ホール)のロイヤル・コンセルトヘボ
ウ管弦楽団を聴いた。
外来オーケストラの演奏会を聴くのは昭和54(1974)年10月のカラヤン/ベルリン
・フィル、K.マズア/ゲヴァントハウス管弦楽団以来、31年ぶりだ。「60歳記念」
に奮発してA席を購入。体調を万全にして上野に向かった。
ロイヤル・コンセルトヘボウは、その昔アムステルダム・コンセルトヘボウといっ
ていたので、私などはいまだにそういいそうになる。大指揮者メンゲルベルクが50
年にわたって常任を務めた。ハイティンクも27年も常任を務めていた。
1988年にイタリア人のリッカルド・シャイーにバトンタッチされ、音色が明るくな
ったのではないかしらん。マリス・ヤンソンスはシャイーの後を継いで2004年から
常任指揮者となっている。いまや、ウィーン・フィル、ベルリン・フィルと並んで
ビッグ・スリーといえるのではないだろうか。
1.ベートーヴェン 「レオノーレ」序曲第3番
19:04オーケストラが入場してきた。団員は自分の席で立ったままコンマスを迎え
る。ほどなくコンマスが登場。チューニングも終わると、M.ヤンソンスが盛大な拍
手に迎えられて、やや足早に入場した。
演奏は p からじわじわとクレッシェンドし、f とエンジン全開になってもまったく
破綻せず、弦のアンサンブル威力も期待どおり、めりはりがすばらしかった。f で
は弦がよく揺れていた。
2.ヤナーチェク 狂詩曲「タラス・ブーリバ」
(1)アンドレイの死
(2)オスタップの死
(3)タラス・ブーリバの予言と死
珍しい曲を持ってきた。コサックの隊長タラス・ブーリバの物語--ゴーゴリの小
説から作曲したという。
大人数、ソロもいろいろに出現。もしかすると、当日はこの曲を一番やりたかった
のではないだろうか。ヤナーチェクはチェコで西部のボヘミアではなく、東部のモ
ラヴィア出身である。モラヴィアはハンガリー文化の影響を受けているようだ。そ
のせいか変った音階、メロディーが出てくる。
演奏は不安、不満をいだく余裕もなく、あっという間に25分弱が過ぎ去った。ff で
フィニッシュ、ヤンソンスは音を切るのに思い切り左を向いた。はたして大きな拍
手でインターミッション(休憩)となった。
3.チャイコフスキー 交響曲第4番
こちらはポピュラーな曲だが、生で聴くのは岩城宏之/N響、小澤征爾/新日フィ
ルに次いで3回目ではないだろうか。久しぶりである。
私が持っているチャイ4のCDは、ムラヴィンスキー(60年録音)、G.セル(62)、
小澤征爾(88)盤であり、それぞれ気に入っている。第2楽章の最初オーボエの旋
律ひとつとってもさまざまな節回しがあり、聴き比べるとおもしろい。
20:05チャイムと同時にオーケストラがバラバラに入場。思い思いに練習を始めた。
銀髪の長身ティンパニ氏は弦の間をウロウロ。下手ではステージ上から客席の写真
を撮っている人がいた。
20:10コンマスが立ち上がり、チューニングが開始された。8:11ヤンソンスが、楽し
んでいただいていますかとでもいうようにニコニコしながら足早に登場。
冒頭、ホルンによる運命の動機はほんの一瞬ひやっとしたがすぐに安定、トランペ
ットに引き継がれた。弦の ppp の美しさは録音にとれないだろう。ホルンと木管の
掛け合いも印象に残った。ここぞという金管の、節度を持った咆哮(ほうこう)は
さすがである。
第2楽章冒頭、ヤンソンスがほとんど振らない中、オーボエがややゆっくりとレガー
トに dim.するうまさには感心もし、泣かされた。これはこの日最大の「収穫」と
なった。
第3楽章のピッチカートのアンサンブルもすばらしく、全員の入魂の演奏だった。
終楽章はラストも盛り上がりがむろん(!)すばらしく、ブラボーの嵐となった。
チャイ4の最後は拍手せずにはいられない曲である。会場は両手を高く上げた拍手
となった。
ヤンソンスの音楽はきわめてオーソドックスだが、単なるそれではなく、むろん微
温的というものでもなく、即物的でもなければ、ロマン性が強いわけでもなく、ロ
イヤル・コンセルトヘボウの合奏力に立った、いわば《完璧なオーソドックス》と
いえるものだろう。
アンコール チャイコフスキー「眠りの森の美女」第1楽章よりアダージョ
最初のハープがしっかり気を入れた演奏だった。終演21:07
プログラム
精養軒における夕食は 蟹(かに)クリームコロッケ
指定席にもかかわらず会場前に長い列
場内ロビー
終演後の楽屋口 大きなオランダ人 小柄な人はおらんだ
* * * *
Ⅱ.すずきじゅんいち監督『442日系部隊 アメリカ史上最強の陸軍』
11月20日(土)、新宿のミニシアター、ケイズシネマで『442日系部隊 アメリカ
史上最強の陸軍』を観た。60歳となったので1,000円で映画が観られるようになっ
た。
『442日系部隊 アメリカ史上最強の陸軍』は、第二次世界大戦時に日系アメリ
カ人で編成された442連隊戦闘団の真実と、生存者の現在を描いたドキュメンタ
リー作品である。「父母の祖国・日本と戦う苦悩を抱えながら、アメリカの中で人
種差別と戦い、ヨーロッパ戦線ではファシズムと戦った伝説の兵士の物語」である。
東條(英機)も松岡(洋右)も日系二世はアメリカ生まれだからアメリカのために
戦えと言ったという。
終戦後、442連隊の表彰式が行われ、大統領から迎えられた唯一の部隊となった。
ハリー・トルーマン大統領は、その時「諸君は敵だけでなく、偏見とも戦い、勝っ
たのだ」と最大級の賛辞を送った。(--実写フィルムが出てくる。)--戦後、
日系人の地位向上につながったようだ。
ハワイ出身の第100歩兵大隊も途中から442連隊に編入されたが、第100歩兵大隊
はイタリアのモンテ・カッシーノ(*)の激戦にも参加している。「ローマ解放」
にあたっては、ローマ市内目前で待機命令を受け、別の白人部隊が「ローマ解放」
の凱旋行進を行っている。勝利の栄誉は白人部隊に与えられた。
(*)モンテ・カッシーノ;イタリアのローマ南東130kmにある標高519mの山
ローマからナポリへ向かう高速道路を走る途中、左手に見える。山頂には
ベネディクトの修道院がある。
モンテ・カッシーノ 平成17(2005)年11月著者撮影 頂上に修道院が見える
1944年10月、442連隊はフランス、ブリエラの町を解放する。その後、まったく
休む間もなく、ドイツ軍に包囲されたテキサス大隊を救出した。211名の(白人の)
テキサス大隊を救出するために442連隊は800名の犠牲者を出した。
また442連隊の522野砲大隊は、ドイツに進軍、1945年4月にはダッハウのユダヤ
人収容所を解放している。(残酷なダッハウ収容所の実写フィルムも含まれている。)
なんといえばいいのだろう、観終わって、言葉が出てこない。
ドキュメンタリーの持つ「迫力」が心に迫ってくる。悲惨な戦争経験をした元日系
兵士が持つ「明るさ」と「けれんなさ」になぜか胸打たれる。
インタヴューに登場する元442連隊の兵士は86歳から93歳。今までは多くを語ら
なかったが、人生の終わりも近づき、歴史を語る心境になったようだ。
ダニエル・イノウエハワイ州選出上院議員(元442連隊兵士)は語る--
「猫を車でひき殺したとしたら、その感触は忘れられないでしょう。まして人を殺
したら一生忘れられません」
ジョージ・サカト氏は名誉勲章を受けている--
「英雄なんかではありません。たくさん人を殺しただけです。亡くなった戦友のこ
とを思うといまだに胸が痛みます」
ご覧になる方はハンカチをお忘れないように。
プログラム
新宿3丁目の ケイズシネマ
ケイズシネマ内 ミニシアターである
* * * *
Ⅲ.アリババと15人の盗賊 第22回リサイタル
11月25日(木)、サントリーホール ブルーローズでアリババと15人の盗賊第22回
リサイタル初日を聴いた。主宰者(主催者にあらず。)宮島さんの司会進行。
「平均年齢64.65歳。アマチュアなので玉石混交、ソロがだめな場合は、私の編曲
をお楽しみください」(宮島さん)
初日だけにメンバーもどんな司会が飛び出すか分からない?リクツのいらない、ま
ったく楽しい2時間だった。(やる方は大変?)芸術というよりも、エンターテイメ
ント。
私の一言コメント( )内はソリスト(敬称は略させていただきました。)
1.「若い季節」(津下本、宮島);ワーオ、ワーオと明るいオープニング
2.「チャペルの鐘」(坂本);最年長。喜寿は超えてらっしゃる?
3.「『いちご白書』をもう一度」(下田);力の抜けた発声。優秀な100mランナー
(または優れたゴルファー)に通じる?
4.「鈴懸の径 」(境田);雰囲気バツグン。私には灰田勝彦と立教を思い出させる。
5.「昴」(大橋);響きを持った、いいベース。
6.「見上げてごらん夜の星を」(中曽根);自然な手振り。難しいコーラス編曲。
7.「ハダカのうた」(片江);大人の童謡として歌った。なぜかおかしい。
8.「旅の宿」(鈴木);ややニヒルな味。スーさんの新しい魅力。
9.「のばせばのびる」(津下本、宮島、大橋、中橋);戦前の明るさ、古賀作曲。
(「戦前は暗かった」は真っ赤なウソ。)
10.「ひとり芝居」(吉村);歌心があり、母音が安定。
11.「ピッ!ピッ!ピッ!ピッ!」(今田、片江、津下本、鈴木);オリジナル曲?
12.「ハッピーバースデー」
誕生日の人に花束とバースデーソングをプレゼントする趣向。当日は該当なく、
「昨日」ということで「24日」--「かおる」ちゃんが手をあげた。嬉しそう。
お二人目は「21日」--「まりこ」さん。今年亡くなった、メンバーの田中さん
のお姉さんだった。(進行は吉村さん)
--休憩--
休憩中に昭和59年卒のS夫妻と談笑。お仕事(公認会計士)がお忙しそうだ。
13.「泰子の一日」(有本、宮島、下田、中橋);最近観られない、浅草劇団の味。
14.「涙そうそう」(石島);唯一の早稲田出身。ややエスプレッシーボに。
15.「犬のおまわりさん」(片江、中曽根、浜、大橋);おもしろ真面目の魅力。
16.「車屋さん」(津下本);力みのない発声はまねができない。
17.「月光仮面は誰でしょう」(吉村、石島、鈴木、吉川);元歌を大胆に編曲に
場内大爆笑。
18.「君恋し」(山縣);中間部の編曲の味。「想いも言葉も乱れ」(司会)--
意図的だとしたらすごい。
19.「ガンダーラ」(下田、今田、境田、山縣);懐かしい曲。
20.「スーだら節」(中橋);ケレンなさの味。
21.「終着駅」(吉川);歌いたくなる歌唱力。こったバックコーラス。
22.「また会う日まで」
<アンコール>
23.「夢の途中」(今田);独特の世界。pp にひきつけられる。
24.「或る雨の午後」(浜);ソロのトリ。自然な発声。
25.「老いの喜び/老いの悲しみ」;クライスラーの曲に歌詞を付けた。早口言葉が
おかしかった。
最後に客席からステージめがけて花束贈呈が殺到した。来年までお元気で!
*来週は慶應ワグネル男声合唱団定期演奏会(11/27)をご報告します。
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