小山俊樹『五・一五事件』は一昨年の4月の新刊だ。その年6月に
購入し、まずは「ざっと」読んだ。その年のサントリー学芸賞を
受賞している。改めて読み直すとおもしろい。
本書「あとがき」にあるように、「読者の関心のある章から、自
由に読めるように」なっている点がすばらしい。
五・一五事件は、昭和7年5月15日に発生している。満洲事変(6
年9月)の翌年だ。
さらに、その前年5年は、ロンドン海軍軍縮会議から統帥権干犯
問題が起きている。
当時の「登場人物」を整理すると、下表ができあがる。
暗殺された政友会の犬養毅首相は76歳であった。
主犯クラスは、海軍の三上卓(当時27)、古賀清志(同24)で禁
錮15年の判決だったが、昭和13年に恩赦により釈放されている。
三上も古賀も戦後まで生きた。
なぞが多いとされる五・一五事件だが、本書を読むとかなり「ス
ッキリ」する。本書によれば、
・事件の発生は、大正期以来続く国家改造運動の延長線上にある。
巷間で事件の原因と言われている、犬養首相個人の言動(満州
国不承認、陸軍・森恪との対立や軍部批判演説など)は直接の
原因ではない。
・政党政治の中断には、元老西園寺に影響力を行使した昭和天皇
の意向が大きい。
・減刑嘆願運動の高揚には、政治介入を強める陸軍の思惑や、格
差に憤る国民の反「特権階級」感情があった。
團琢磨、井上準之助は、昭和7年2、3月、五・一五事件発生前に
血盟団事件で暗殺されている。
ちなみに、同年2月の第18回総選挙では、与党政友会(犬養毅)が
303議席の圧勝、民政党(若槻礼次郎)は146議席の惨敗となった。
昭和5(1930)年当時の歴史上の人物
生年 | 1930年時(歳) | 没年 | 没年齢 | |
昭和天皇 | 1901 | 29 | 1989 | 87 |
西園寺公望 | 1849 | 81 | 1940 | 90 |
牧野伸顕 | 1861 | 69 | 1949 | 87 |
木戸幸一 | 1889 | 41 | 1977 | 87 |
犬養毅 | 1855 | 75 | 1932 | 76 |
安達謙蔵 | 1864 | 66 | 1948 | 83 |
若槻礼次郎 | 1866 | 64 | 1949 | 83 |
鈴木喜三郎 | 1867 | 63 | 1940 | 72 |
浜口雄幸 | 1870 | 60 | 1931 | 61 |
幣原喜重郎 | 1872 | 58 | 1951 | 78 |
森恪 | 1883 | 47 | 1932 | 49 |
頭山満 | 1855 | 75 | 1944 | 89 |
北一輝 | 1883 | 47 | 1937 | 54 |
大川周明 | 1886 | 44 | 1957 | 71 |
井上日召 | 1886 | 44 | 1967 | 80 |
菱沼五郎 | 1912 | 18 | 1990 | 78 |
西田税 | 1901 | 29 | 1937 | 35 |
藤井斉 | 1904 | 26 | 1932 | 27 |
三上卓 | 1905 | 25 | 1971 | 66 |
古賀清志 | 1908 | 22 | 1997 | 89 |
團琢磨 | 1858 | 72 | 1932 | 73 |
井上準之助 | 1869 | 61 | 1932 | 62 |
真崎甚三郎 | 1876 | 54 | 1956 | 79 |
荒木貞夫 | 1877 | 53 | 1966 | 89 |
永田鉄山 | 1884 | 46 | 1935 | 51 |
東郷平八郎 | 1848 | 82 | 1934 | 86 |
加藤寛治 | 1870 | 60 | 1939 | 68 |
山梨勝之進 | 1877 | 53 | 1967 | 90 |
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