山崎正和『おんりい・いえすたでい’６０ｓ』（文藝春秋／文春文庫）

1931年に出版されたF.L.アレンの名著『オンリー・イエスタデイ』（ちくま文庫）
は1920年代の米国が描かれている。それを読むと「現代」が1920年代に始まったこ
とが分かる。－－「短いスカート」、「自動車の隆盛」、「誇大宣伝時代」、「不
動産ブーム」等々。（山本夏彦が戦後の風潮はすべて大正時代に発生しているとい
う意味のことを書いていたのと似ている。）

本書は、F.L.アレンに倣（なら）って山崎正和が日本の1960年代を「ですます調」
で描いた傑作である。

　　1961年の夏、新聞紙面に天気予報の新しい言葉として、「不快指数」という用
　語が現れました。

　　当時、多くの種類のビタミン剤と並んで肝臓のクスリが売り出され、老化防止
　剤や健康促進剤というような名称で、いわゆるドリンク剤なるものが流行し始め
　たのは周知の通りです。

　　なかでも重大な事態は、日本の近代化とともに絶えず進行し、さらに戦後急激
　に拍車のかかった核家族化という現象でした。「マイホーム」「カーつきババ抜
　き」などという言葉がはやったのが60年代ですが、それを呟（つぶやき）きなが
　ら、日本人は「一代家族」という、きわめて小さい生活圏の中にばらばらに閉じ
　こもるようになりました。


本書を読むと「懐かしき」60年代がよみがえる。最後に「60年代の年表」（抜粋）
を付記しよう。
1960（S35)　安保反対の全学連、国会に乱入、東大生樺美智子が死亡
1961（S36)　大鵬、柏戸そろって横綱に昇進
1962（S37)　アメリカのテレビ映画「ベン・ケーシー」始まる、空前のヒット
1963（S38)　「女性セブン」創刊
1964（S39)　東京オリンピック開催
1965（S40)　NTVの「11PM」スタート
1966（S41)　ビートルズ来日
1967（S42)　警視庁、ミニスカートの女性の性犯罪被害を報告せよ、と各署に指示
1968（S43)　川端康成、ノーベル文学賞を受賞
1969（S44)　東大の入学試験中止
1970（S45)　日本万国博開催
　

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