考えてみれば、星たちは、何十億年前から輝いており、我々ヒトは、人生という瞬く間の時間ながら、生きていれば、1年中地球のどこかかしらでお目にかかることができるのだし、日本の南西諸島でしか見られないサザンクロスの二つとケンタウルスの二つと日本の関東以南に現れるカノープスを除いて、晴れていれば、そんなに努力をせずとも会うことができるのだから、輝き星たちとは、欲張らずに、1日1個でも、懐かしい恋人にでも再会できたという感動をもって、触れ合っていこう。
という気持ちになったのは、今朝から晴れるという気象予報のため、北東の水平線が見渡せる白保海岸に5時過ぎに出かけたのはいいが、はじめ暗い雲で全天が覆われて、北風が冷たいし、6時過ぎにはもう帰ろうかと考え始めた矢先、雲が少しずつ切れて、目標にした夏の大三角形のうち、こと座のベガだけが、顔を見せてくれただけで満足したから。
白鳥のデネブとわしのアルタイルは6時40分過ぎには水平線の上に現れているはずなのだが、黒い雲が水平線にびっしり張り付いていた。二人には今日は振られたが、この日の朝はベガだけで十分。8,9割雲に覆われ、あきらめていた矢先に美しく微笑んでくれたことに、むしろ、絶望の牢獄の窓から差し込む一条の光のような不可思議な感動というものを覚えた。
満足して帰ろうとすると、最後に、東の空に、金星、木星、さそりのアンタレスが一堂に挨拶してきた。「明日は、もっと晴れるよ、明日の朝、またおいで」と語りかけてくれているようでもあった。
p.s.
白保の浜辺に出て、やっぱり、わし座のアルタイルが一番難しいのだ、と感じた。もう夜明けは近く、水平線上に現れたとしても、光の中に溶け込んでいくのである。鷲が太陽の炎に落ちていくように。(明日は、彦星さんを織姫に逢わせたいな、という気持ちも、ある種の欲かな。)
残された輝き星
① はくちょう座 デネブ (白鳥の尾)
② わし座 アルタイル (飛ぶ鷲)
③ オリオン座 ベテルギウス(巨人の脇)リゲル(巨人の左足)
④ おうし座 アルデバラン(後に続く者)
⑤ りゅうこつ座 カノープス(水先案内人)
⑥ エリダネス座 アケルナル (川の果て)
⑦ みなみのうお座 フォーマルハウト (大魚の口)
の8人 (もう擬人化でいきましょう)
暗い雲の切れ間から、輝いているのは
織姫が平行四辺形の琴を抱いている。ベガだ。
輝き順に金星・木星・アンタレス