かぜねこ花鳥風月館

出会いの花鳥風月を心の中にとじこめる日記

盆に手向ける夏の花、添える句

2023-08-05 14:56:41 | 日記

今朝のNHKFM「音楽の泉」は、武満徹さんの映画音楽やソングブックを特集していた。

知らなかったが、あの武満さん最良の映画音楽「波の盆」の挿入曲が武満さん自身の編曲により20分ばかりの演奏会用に作品化されていたということで、この作品を尾高忠明さん指揮、N響の録音で聴く。ただし、聴いたのはうだるような暑さの午後で、NHK「らじるらじる」の聞き流し版である。

ハワイの波の音を聴いたりや浜辺に吹く風を受けたような心地がして、すうっと暑さが引いていく。武満さんの音楽もバッハのように真夏にきく音楽だな、と一人思った。

「波の盆」以外にも「夢千代日記」や、ギターによる「ミッシェル、ヘイジュード」、「小さな空」や「翼」なんかのソングブック、どれもこれも聴き入ってしまい小時間ばかりの避暑を楽しむ。

聞き逃しは1週間ほど何度でも聴けるので、窓を開けて、扇風機の風を当てて、イヤホンの向こうの蝉しぐれを少し聞きながら、目を閉じて涼やかな夏の旅に出かけよう。

 

涼しさや 武満徹 波の盆

NHKFM音楽の泉2023.8.5放送聞き逃し版

 

今、野草園には8月の花たちが盛りと咲いている。少し撮って来たので、盆に手向ける花としたい。「俳句歳時記」から秀句を添えて、なきひとびとをなぐさめよう。

 

ミソハギ科ミソハギ 漢字で「溝萩」だが、「聖霊花」とも「千屈菜」とも書き表される。

盆に添える花だから「聖霊」というのだそうだ。

 

千屈菜や若狭小浜の古寺巡り (湯下量園)

 

ナデシコ科カワラナデシコ

 

撫子や狂へば老も聖童女 (福田蓼汀)

 

 

キキョウ科キキョウ

仏性は白き桔梗にこそあらめ (夏目漱石)

 

ユリ科コオニユリ

 

山霧の引きゆく迅さ小鬼百合 (星野恒彦)

 

アヤメ科ヒオウギ

 

ひあうぎの咲くとここより山の風 (伊藤三十四)

 

イネ科ススキ

 

金の芒はるかなる母の禱りをり (石田波郷)

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クサギ(臭木)の花咲く8月

2023-08-04 18:04:33 | 日記

数年前、Eテレ「こころの時代」に登場した岐阜県在住の高僧が、寺の修行僧をひき連れてクサギの葉を野山ででいっぱい刈り取ってきて、何度も湯がいてその臭気を取り去り、保存食にして漬物や汁の実としていただいている様子が映し出されていた。

臭くて誰もが見向きもしない葉でも食材として利用が可能ということだ。たしかにWikipediaなどで調べてみると、若葉のうちに何度か手間をかけて臭気を拭い去ると、独特の食味の菜に変化し、山菜として利用できるのだとある。

「路傍の薄汚い土くれでであっても、磨けば琥珀のような輝きを発する、ヒトやモノにはそのような隠れたお宝がある」という教訓を学ぶありがたい講話だったのか、大事なところをわすれてしまった。

まあ、それはともかく、たしかにクサギ(臭木)はシソ科だというのに、その葉っぱをちょっとちぎってにおいを嗅いでみるたまらなく嫌なにおいがする。ナツメ社の樹木図鑑の説明では、この匂いを悪臭と感じるか否かに男女差があって、男性は苦手であっても女性は平気という傾向にある、と記されている。男性は「カメムシ」の匂いと感じるのに対して、女性は「ピーナツバター」の匂いと感じるのだという。そうなのかしら、そうであればこの世界は、男性と女性で見えている世界が違うということなのか、興味深い話ではある。

クサギの葉っぱはそういうことであっても、この真夏に盛りを迎えているクサギの花は、清楚な白い大文字をいくつも天上に向けて「チョウやハチの皆さんおいでください営業中ですよ」という風ににぎやかだ。昼にはおおきなカラスアゲハなどが飛んできて、夜は夜で大型のスズメガの仲間たちがその白さとこの花の持つ芳香に魅かれてやってくるのだという。確かに花の匂いは甘い。

また受粉した花は、秋になると赤いガラス皿に盛られた瑠璃のような宝石に変わるのだから、まったくクサギという木本には興味が尽きない。

ああ、マキノマンタロウではないが、もっと深く植物の個性を観察すればまた格別なこの世の不可思議と美の世界に植物たちが誘ってくれるのかもしれない。

が、この真夏はいたずらに暑く、オイラは植物の前に長く立ち尽くすことはできない。このクサギの美しい宝石の季節にまたやってこよう。

 

 

 

 

おしべが先に長く伸びて、あとからめしべが伸びだして自家受粉をふさいでいるのだという。

 

 

この花だったら夜でも目立つだろう。よるは夜のチョウいやガの仲間がお出ましだ。

 

Wikipediaクサギ(臭木)

 

 

 

 

 

 

 

 

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レンゲショウマに会ってトガクシショウマに思いを寄せる

2023-08-03 19:09:25 | 日記

猛暑日寸前の日盛りの午後、小1時間ばかり汗だくになりながら野草園を歩き、今開いている花など数種を撮影する。北緯38度に位置する「野草園」という涼しそうな名前の公園歩きであっても、今や「命に係わる」予感がするほど、日本の真夏は変わりつつある。

 

今日出会った花たちのなかでとても独創的な姿で、かつ美しいなと思ったのはキンポウゲ科に分類されるレンゲショウマ(蓮華升麻)だ。

ショウマの名を冠した草本は、山菜としてもおなじみのヤマブキショウマ(バラ科)、トリアシショウマ(ユキノシタ科)、サラシナショウマ(キンポウゲ科)などがあるが、これらの花は白い小さな花を穂状につけているのに対し、レンゲショウマや朝の連続テレビ小説「らんまん」で田邊教授事件で話題になったトガクシショウマ(メギ科)や四国や九州に分布するキレンゲショウマ(ユキノシタ科)は全く異なる形状の美しい花を咲かせる。

とくに今日出会ったレンゲショウマは、まさに蓮華のような花弁をうつむき加減に咲かせ、その花弁は純白の曇りガラスにやや灰を帯びた薄紫をまぜあわせたような色合いで、さらに、その中心にシベを包む丸い花びらがあって先のほうが薄紫のムラサキを濃くしていくのであって、まことに典雅で上品な配色だ。

下からこの花を見つめると、まるで天上から降りてきた小さなUFOのようだ。きっと、美しい天女たちが搭乗しているのだろう。

 

花を咲かせている茎は、緑の球をいくつもつけておりその球がやがてつぼみとなってこの美しい花を咲かせるようだ。

開花して何日ぐらいさいているのだろうか。やや円熟した花弁はシミのような紅斑をみせながらやがて萎れていくようでもある。

この花を真上から見てもまたユニークで美しい。美しいレンゲはやや薄緑のややかたいガク片状なもので支えられているようだが、花の裏側(真上)からでも虫たちに花の存在をしっかり知らせている。

レンゲショウマは本州中部の太平洋側に咲く日本固有種。田邊教授が恋した薄紫の花が美しいトガクシショウマは本州中部の日本海側に咲く日本固有種。レンゲショウマは、今日は野草園でだがいつかどこかで出会った記憶があるのに対し、トガクシショウマはいまだ出会いがないと思う。

図鑑を見ると「尾瀬」で撮影された写真が掲載されていた。レンゲショウマと違って花期は5月から6月と早い。ことしは行きそびれたが来年こそ6月の尾瀬を訪れてトガクシショウマの可憐な花を探し求めたいな。

 

【今日撮影した何枚かのレンゲショウマ】

 

 

 

 

 

 

 

 

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