剣道は国民の道であるということ。
天皇陛下が皇位を継承され微証(ちょうしょう)として三種の神器がある。
即ち、八咫鏡(やたのかがみ)・八坂瓊曲玉(やさかにのまがたま)・草薙剣(くさなぎのけん)である。
八咫鏡は神の道を表している。天照大神が天岩戸(あまのいわと)に隠れられた時、
石凝姥命(いしこりどめ)が作ったという鏡、天照大神が瓊瓊杵命(ににぎのみこと)
に授けたものといわれる。
伊勢神宮に天照大神の御魂代(みたましろ)として奉斉(ほうさい)され、
その模造の神鏡は宮中賢所に奉安されている。
八坂瓊曲玉(やさかにのまがたま)は皇室の道を表している。
天岩戸の変に群臣の奉った曲玉(まがたま=勾玉)。宮中に安置してある。
八坂瓊曲玉は、多くの曲玉を一つの長い紐に貫き連ねたものであり、
神代記には「天明玉(あまのあかるたま)の作れる八坂瓊曲玉(やさかにのまがたま)」とある。
草薙剣(くさなぎのけん)は國民の道を表している。
素戔嗚尊(すさのをのみこと)が出雲国(島根県)簸川(ひのかわ)上流で
八岐大蛇(やまたのおろち)を斬った時、その尾から出たという剣。
もと天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)と言ったが、
景行天皇(けいこうてんのう)の御代、日本武尊(やまとたけるのみこと)が東征の折、
この剣で草を薙ぎ払ってから称(よびな)を改め、後、熱田神宮に祀られたという。
この三種の神器は八咫鏡=智(心)
八坂瓊曲玉=仁(気)
草薙剣=勇(力)と教えてある。
この草薙剣が剣の道であり、国民の守らねばならない道である。
善良な国民を守るため、無謀に攻めてくる賊に剣をもって応戦してこれを征伐し、国を安奉にした。
ここに剣道の精神がある。
即ち剣道は先ずこれを愛し守ることから始まり、
家庭を愛し守り、隣人地域社会を愛し守り、郷土を愛し守り、
やがては日本民族愛に目覚め、日本の国を守る道である。
相手が攻撃してくるから、われを守るため、立ち上がり、やむなく打つのが剣道本来の道であって、
相手が攻撃もしてこないのに、われから先に攻撃するのは国民の道に反するのである。
即ち国民の道は実に愛国精神の発露からくるのであって、
剣は愛であるという所以(ゆえん)がここにある。
昔、死中に活を求めるため、命をかけて作り上げた古流の形を日夜命がけで鍛錬自得し、
そのまま真剣勝負に及んだというこの古流の形には、真の剣道の理念が含まれている。
剣道修業のための大切なこと、
「弟子の位の仕太刀が、師の位の打太刀に、自分の調子で先に打って出て勝つ技は少しも教えてない所」
をよくよく自覚し愛国精神漲る(みなぎる)立派な人間になるため、本筋の剣道を修業しなければならない。