【講師の秋山演亮氏「宇宙新興国との連携を」】
国立国会図書館関西館(京都府精華町)で9日「日本の宇宙開発の過去と未来」と題した講演会が開かれた。宇宙関連の書籍を集めた小展示「宇宙に夢中―古代の宇宙観から『はやぶさ』まで」(9月16日まで)に関連した催し。講師の秋山演亮氏(和歌山大学宇宙教育研究所所長/特任教授)は今後の宇宙開発について「日本単独ではなく宇宙を目指す新興国と一緒に取り組むべきだろう」などと語った。
秋山氏は1965年生まれで、西松建設、秋田大学などを経て2010年に和歌山大学宇宙教育研究所の初代所長に就任。この間、探査機「はやぶさ」のプロジェクトに小惑星「イトカワ」の表面を撮影するカメラメンバーとして参画した。また「今後の宇宙政策の在り方に関する有識者会議」のメンバーとして2010年、国に「宇宙庁」(仮称)の設置などを提言、日本の宇宙産業を支える人材の育成にも力を注いでいる。
和歌山大の宇宙教育研究所は発足直後の2010年6月「はやぶさ」の地球帰還をオーストラリアからネット中継した。講演会でもその時の模様が放映された。「春の大三角」の方角から突然小さな火球が現れ、次第に輝きを増す(写真㊨)。「あっ、来た」「すごい」「おかえり~」と観測チームの3人。多くのトラブルを乗り越えての7年ぶりの帰還の瞬間は今見ても感動ものだ。当時サッカーワールドカップなどもあってテレビでは生中継されなかった。和歌山大のこのネット中継は全国で約64万人が視聴したという。
「日本は史上4番目の人工衛星打ち上げ国。『はやぶさ』など先端科学技術にも優れ、世界有数の宇宙技術保有国であるのは間違いない」。かつて日本は米国、旧ソ連(ロシア)、ヨーロッパとともに「宇宙4強」といわれ、今は中国、インドを加えて「宇宙6強」時代といわれる。だが、日本は今〝脱落〟の瀬戸際にあるとみる。
1カ月ほど前、ある大手全国紙が「5年後に月面着陸 政府が研究開発本格化へ」と報じた。だが、秋山氏は「絶対にない」とその可能性を全面的に否定する。その理由は「カネがかかりすぎるから」。日本の宇宙産業は典型的な官需依存型だが、国の財政は疲弊している。〝失われた20年〟の中で宇宙機器分野からの企業の撤退は相次ぎ、従事者も減少の一途。欧米との格差は広がるばかりだ。
秋山氏は日本の今後の課題としてロケット打ち上げ技術の維持と国際協力を挙げる。「イプシロンロケット(人工衛星打ち上げ用固体燃料ロケット)を1年に少なくとも1~2機は打ち上げる必要がある」「これからは産業化を意識しながら、海外諸国とどう連携していくかが課題だろう」。秋山氏は秋田大学在任中の2005年に「能代宇宙イベント」を立ち上げた。10回目を迎える今夏も8月15~22日、大学生のロケット打ち上げ実験など様々なイベントが繰り広げられる予定だ。