【原産地は熱帯アメリカ、英名は「スパイダー(蜘蛛)フラワー」】
原産地は南米のブラジル、アルゼンチン、パラグアイなどの熱帯地域。春蒔きの1年草で、熱帯育ちだけあって暑さに強く猛暑の中で可憐な小花を次々に咲かせる。草丈は1m前後。花は長い柄を持った4弁花で、ピンクや白、赤紫など涼しげなパステルカラーが中心。その花びらの中心から太い雌しべと4本の長い雄しべが飛び出る。
明治時代の初めにヨーロッパ経由で日本に渡ってきた。和名は「セイヨウフウチョウソウ(西洋風蝶草)」。花が夏風に揺れる様子を蝶が舞う姿に見立てた。だが、英名は「スパイダーフラワー」。細長い雄しべを蜘蛛の足に見立てたのだろう。英国王立園芸協会監修の「A―Z園芸植物百科事典」でも、クレオメを「花は葉の上につきクモのような形をして……」と紹介している。蝶と蜘蛛。国や地域によって、同じ花でもこんなに見方が違うとは!
クレオメはフウチョウソウ科クレオメ属。「クレオメソウ」とも呼ばれる。長い葉柄とその基部に棘(とげ)があることから「ハリ(針)フウチョウソウ」の異名もある。さらに中国名から「スイチョウカ(酔蝶花)」と呼ばれることも。ちなみにクレオメはギリシャ語で「閉じる」を意味する「kleio」に由来するという。和名の頭にわざわざ「西洋」と付くのは、別属の植物に「フウチョウソウ」(今は日本でほとんど見られない)があることによるらしい。
クレオメを代表するのが「ピンククイーン」という品種。咲き始めのピンク色の小花が翌日白くなるため花穂がツートンカラーで彩られる。新しい花の優良品種を選ぶ「オールアメリカ・セレクションズ(全米審査会)」で約70年前の1942年、銀賞に輝いたという。北海道美瑛町の「展望花畑 四季彩の丘」では6月下旬~7月下旬に続き8月下旬~9月下旬も見頃という。兵庫県淡路島の「あわじ花さじき」ではまだ見頃のはずだったが、日本列島を襲った台風11号でヒマワリとともに倒伏してしまったそうだ。