【「イカ丸」に乗って七ツ釜洞窟を遊覧】
日本三大朝市の1つともいわれる佐賀県唐津市呼子町の「呼子の朝市」。呼子港に近い朝市通りに、元日を除いて毎日午前7時半から正午まで露店がずらりと並ぶ。鮮魚にアジの干物、イカの一夜干し、新鮮な野菜や果物……。干物を試食しては「うまい!」と買い求める観光客。ちびっ子たちは屈み込んで、まだピチピチはねる魚たちをじっと見つめていた。
朝市通りを抜けた所に白壁が美しい「鯨組主中尾家屋敷」があった。江戸時代にクジラ漁で巨万の富を築いた中尾家の建物。県の重要文化財に指定されている。内部は残念ながら撮影禁止だった。さらに北上すると「大綱引通り」。通りに面した呼子大綱引会館へ。実際に使う大綱を展示しているが、その綱の太さは目を瞠るほど。長さは100mもあるという。今は毎年6月の第1土・日曜に、岡組と浜組の二手に分かれて綱を引き合う。
この綱引き、豊臣秀吉が朝鮮出兵のため肥前名護屋城に布陣した際、将兵の士気を鼓舞するため加藤清正と福島正則の両陣営を東西に分けて軍船の艫綱(ともづな)を引き合わせたのが始まりという。昨年4月、国の重要無形民俗文化財に指定された。大綱引会館では今年の大会のフォトコンテスト入選作品や昔の写真、対戦成績の一覧表なども展示中。その一覧によると、今年の「大人綱」は浜組が2対1で勝って岡組の7連覇を阻んだようだ。
この後、遊覧船「イカ丸」に乗って国の天然記念物にも指定されている「七ツ釜」見物へ。七ツ釜は玄界灘の荒波によってできた海蝕洞窟。〝柱状節理〟という柱状の玄武岩が堆積した断崖の下にあり、7つのカマドを並べたような姿から七ツ釜と呼ばれる。だが、実際には洞窟は7つ以上あるそうだ。船首から洞窟内を見上げると、黒い方形の岩がびっしりと林立していた。洞窟の中には奥まで貫通したものもあった(下の写真下段㊧)。まさに自然の造形美。「イカ丸」は夕日の眺めが絶景という呼子大橋を右手に見ながら、40分間の遊覧を終えて港の乗船場に戻った。