【名前は扇状に広がる葉姿から 黒い種子から「ぬばたま」とも】
主に西日本の日当たりのいい山野に自生するアヤメ科の多年草。朝鮮半島や中国、インドにも分布する。7~8月頃、数本に枝分かれした茎の上部に径5cm前後のオレンジ色の鮮やかな6弁花をつける。草丈50~100cm。花びらはほぼ水平に大きく開き、濃い赤の斑点模様が入る。
名前は広い剣状の葉が扇形に並ぶ様子を、ヒノキの薄板を綴じて作った昔の桧扇に見立てたことに由来する。ただ、緋色の花色から「緋扇」から来ているとの見方もあるそうだ。豹柄の花から英名では「レオパード・フラワー」と呼ばれる。ヒオウギは関西の祭りに欠かせない花で、京都では祇園祭のとき、ヒオウギを生ける習慣がある。
万葉集には「ウバタマ(烏羽玉)」や「ヌバタマ(射干玉)」などとして80首余り登場する。これは光沢のある漆黒の種子の色から。いずれの歌も「夜」「黒髪」「黒馬」など黒いものに掛かる枕詞として使われており、不思議なことに花自体を愛でて詠んだ歌は見当たらない。別名の「カラスオウギ(烏扇)」も黒い種子に由来する。北アメリカでは帰化植物として野生化し、「ブラックベリー・リリー」と呼ばれているという。
「ダルマヒオウギ」は草丈が低く葉幅が広い矮性種。そのダルマ系の高性種で花が大輪の園芸品種に「オオクボヒオウギ」がある。多彩な花色から生け花の花材などとして人気も高い。ヒオウギの群生地として知られる山梨県山中湖村の高指山ではいま「第10回ヒオウギの里祭り」が開催中(17日まで)。「射干(ひおうぎ)のまはりびつしより水打つて」(波多野爽波)。