【内外受賞作中心に約60点、高取町のギャラリー「輝」で28日まで】
奈良県高取町在住の国際的な押し花作家、亀井園子さんの代表作を一堂に集めた「創作押し花&染作品展」が、地元高取町の「町家のギャラリー輝」で開かれている。内外の受賞作品を中心に約60点。亀井さんは「これまでの集大成と同時に新たな出発点」と位置づけている。28日まで(水曜日休館)。
亀井さんの作品には草花のほか果物や野菜なども使った立体感にあふれるものが多い。草花の多くはご自宅の庭園で自ら育てたもの。使う果物はイチゴにミカン、スイカ、メロンの皮、野菜はオクラ、アスパラガスなど実に多種多彩。これらの〝自然からの贈り物〟に、草木染や自作の俳句、音楽の楽譜などを組み合わせて、額縁の中に独創的な世界を作り出す。それらの作品を貫くのは自然への賛歌であり、平和へのメッセージである。
作品に対する評価は高い。とりわけ海外での注目度は高く、これまで多くの賞を受賞してきた。アントニオ・ガウディ芸術大賞、フランス「美の革命展」ルーヴルグランプリ賞、サンクトペテルブルク美術アカデミー賞……。バッハの大ファンという亀井さんの作品の中にはドイツのセバスチャン・バッハ・アートグランプリ賞を獲得したものも。
別の作品はカラヤン生誕100周年記念楽譜の表紙デザインにも採用された。さらに昨年春にはゴッホ生誕160周年を記念した「永遠のひまわりシャンパン芸術創生賞」を受賞し、特別醸造のシャンパンのラベルにもなった。作品展の会場にも受賞記念のトロフィーやブロンズ像、ティアラなどがずらりと並ぶ。亀井さんが主宰する押し花教室「長園(おさぞの)」受講生たちの作品も展示されている。
亀井さんが押し花を始めたのは数十年前、春の到来を告げるツクシを半切りにしてみたのがきっかけとなった。今回の作品展は数年前から温めていたもの。ところが約1カ月前の8月7日、押し花作りを側面から支えてくれ、作品展を楽しみにしていたご主人が亡くなられたという。作品展の準備も重なって、さぞかしご苦労も多かったに違いない。
1933年(昭和8年)生まれの亀井さんは常々「コウキ高齢者でありたい」と話す。コウキは後期でなくて光輝。「光輝高齢者」である。お年寄りに対する敬愛の念が微塵も感じられない「後期高齢者」。その事務的で冷たい言葉に対して、なんといい響きだろうか。亀井さんは「今回の作品展を1つのめどとし、見ていただいた方々のご意見を参考にしながら、さらに前進していきたい」と話していた。