【盆やお彼岸に欠かせない仏花、最近はブーケやアレンジ用にも】
キク科の1年草。原産地は中国や朝鮮半島の北部で、日本には江戸時代中期の享保年間(18世紀前半)に渡来したとみられる。和名は「エゾギク(蝦夷菊)」。これは「エドギク(江戸菊)」から転訛したのではないかといわれる。エゾギク属(カリステファス属)の1属1種の植物だが、かつてシオン属(アスター属)に分類されていた名残から今もアスターとして流通している。属名のカリステファスは「美しい冠」の意。
盛夏から秋にかけて茎の先に白や赤、青、紫など色とりどりの花を付ける。花の形も一重や八重咲き、花弁が球状に盛り上がったポンポン咲きなど様々。切り花として全国各地で栽培されており、とりわけ仏花として盆やお彼岸に欠かせない花の1つになっている。最近は小輪多花性の品種が「アレンジメントアスター」と呼ばれ、ブーケやアレンジ用としても人気を集めている。
別名に「エドギク」のほか「サツマギク(薩摩菊)」や「サツマコンギク(薩摩紺菊)」「チョウセンギク(朝鮮菊)」「タイミンギク(大明菊)」など。「サツマギク」の名前は日本に渡来後、薩摩(鹿児島)地方で広く栽培されていたことによるという。英名は「チャイナ・アスター」。
「宿根アスター」と呼ばれるものはユウゼンギク(友禅菊)やシオン、クジャク(孔雀)アスターなどシオン属の植物の総称。いずれも多年草で、ユウゼンギクは北米原産の「ニューヨークアスター」の和名、同じく北米原産のクジャクアスターはクジャクソウとも呼ばれる。シオン属の園芸品種はキリスト教の聖ミカエル祭(9月29日)の頃に咲くことから「ミケル(ミカエル)マスデージー」と呼ばれることも。「蝦夷菊や老医のことばあたたかく」(柴田白葉女)。