【3年前に境内で発見された「天神様の贈り物」】
京都府相楽郡和束町の鎮守社「和束天満宮」。室町時代の社殿建築様式を残す彩色鮮やかな本殿は国の重要文化財に指定されている。その本殿手前向かって左手には天満宮らしく神牛が飾られている。ところが右手の置き物はなんと不思議な模様の2つの石で、小さな檻(おり)のような箱の中に〝鎮座〟していた。
和束天満宮は京都府道5号木津信楽線沿いにある。983年に京都・北野天満宮より円融天皇の勧請で菅原道真公を祀ったのが始まり。本殿は南北朝の兵乱で1336年に焼失したが、その12年後には再建された。一間社流造りで、唐破風付きの拝殿に併設された赤い鳥居をくぐると、すぐ本殿に突き当たる。拝殿には日清戦争への地元出征者名を列挙した「征清紀念」という奉納板も掲げられていた。
石が納められた箱の上には「奇跡」と銘打って、こんな説明が添えられていた。「四六億年前のヘドロとマグマの化石 天満宮境内から天神様の贈り物 ハチマキ石と絆の石 御神徳を戴いて出現 世の人々のために元気を与え絆を深めて 願い叶え給え」。ハチマキ石が右側で、絆石が左側ということだろう。黒い石の表面に金色に輝く模様。なんとも不思議な造形だ。
これらの〝奇石〟が見つかったのは2011年8月というから、まだそんなに古い話でもない。それまで本殿向かって右手前には左側の神牛と向き合う形で神牛が置かれていたようだ。府道を跨ぐ朱塗りの橋を渡ると、鬱蒼とした社叢が広がる。その森閑とした中に春日神社や梅宮神社の本殿(上の写真=いずれも京都府指定文化財)などの摂社が鎮座する。普段訪れる人は少ないが、山城地区の新パワースポットとして注目を集め始めるかもしれない。