【異臭で誘われた虫は受粉がすむまで花冠から脱出困難に!】
キョウチクトウ科(旧分類ガガイモ科)ケロペギア属(セロペギア属とも)の多肉性常緑つる植物。原産地は南アフリカやモザンビーク。独特な花の形を落下傘に見立てて「パラシュートプランツ」や、傘の形に似ていることから「アンブレラフラワー」と呼ばれる。日本では「酔竜」の名前でも知られる。
学名は「ケロペギア・サンダーソニー」。長さ10cmほどの花筒は淡緑色で濃緑色の模様が入り、基部が少し膨らむ。花冠は上部で5つに裂け先端で合着、直径約5cmの花を傘状に開く。属名「ケロペギア」は植物分類学の父・リンネによる命名といわれる。語源には諸説。その1つにギリシャ語で「蝋(ろう)」と「泉」を意味する言葉の合成語という説がある。花姿から「蝋で作ったような噴水」と名付けたのだろうか。
ユニークな花の形は昆虫による受粉に適応したもの。花は異臭を放って小バエなどの昆虫をおびき寄せる。花筒内部には細かい毛が下向きに生え、昆虫がいったん侵入すると脱出が難しい造り。虫が中で動き回るうちに雌しべの柱頭に花粉が付着する。虫は受粉がすんで花冠がしおれるまで外に出られないというわけだ。この小さな植物の中にも壮大な進化の物語が潜んでいた。