【金子千尋著、PHP研究所発行】
オリックス投手、金子千尋は昨シーズン16勝5敗・防御率1.98でリーグ最多勝と最優秀防御率の2冠を達成、初の沢村賞にも輝いた。今や日本の球界を代表するナンバーワン・ピッチャー。昨年オフには一時メジャー移籍話も浮上したが、オリックスに残留しリーグ優勝・日本一を目指すことになった。今年も金子の〝快投〟乱麻の活躍に注目が集まることだろう。
社会人野球のトヨタ自動車に所属していた金子がプロの世界に入ったのは10年前の2004年。自由獲得枠でのオリックス入団だった。1年目は肘の故障もあって一軍での登板はゼロ。しかしスカウトの期待に応え次第に力を発揮する。2008年から4年連続2ケタ勝利。2010年に初の最多勝、13年には最多奪三振、そして昨年の大活躍。
この間、金子は「どうすれば、自分みたいなピッチャーが、プロの世界で勝てるようになるのか」自問自答してきた。「その命題と真正面から向き合ったからこそ、おそらく他のピッチャーとは違う思考を身につけ、そして新たな球種を一つずつ習得していったのです」。金子の持ち球は実に多彩。カットボール、スライダー、シュート、チェンジアップ、スプリット、カーブ、パワーシンカー、ツーシーム――。
「ストレートだけでは抑えられないから、変化球をたくさん投げるしかない。自信を持っているのではなく、打者を抑えるために、必然的にいろんな変化球を投げ分けている」という。「打者から見て、一番打ちにくいのはどんな変化をするボールなのか。ピッチャー目線を捨て、打者目線で変化球を考えるようになったとき、それまでとはまったく違う発想が芽生えた」とも。、
では、金子が考え抜いた末の理想の変化球とはどんなものなのか。「指先を離れたボールがストレートと同じ軌道で打者に向かっていって、打者がヒッティングの動作を始めたポイントで左右、あるいは下に変化していく、というもの。まっすぐ伸びたボールが、途中でいろんな方向に枝分かれしていくようなイメージ」。そして理想のピッチングは「27のアウトをすべて凡打で、100球以内の投球で終わらせること」という。
最終章第6章「ライバルに学ぶ」の最後に「強打者の才能が、ピッチングを磨いてくれる」という1項目を立てている。その中で「ピッチャーとして一番嫌なのは、どのコースへ投げても、しっかりと振りきってくる打者」として、ソフトバンクの内川聖一や李大浩、柳田悠岐、長谷川勇也らの名前を挙げる。今シーズンの開幕は3月27日。金子と好打者の対戦がますます楽しみになってきた。