【芭蕉や許六の自画賛、伝蕪村筆『芭蕉翁涅槃図』など】
三重県伊賀市の芭蕉翁記念館で企画展「俳諧と絵画」が開かれている。俳句と絵を組み合わせた画賛、句とその作者を描いた画幅、絵が入った句集など、俳句と絵画の両方を楽しむことができる作品約60点を展示中。6月21日まで。(写真は上野公園内の「芭蕉翁記念館」㊧と「俳聖殿」)
芭蕉筆の『「茸狩(たけがり)や」画賛』は芭蕉が書いた「茸狩やあぶなきことにゆふしぐれ」に、弟子で〝蕉門十哲〟の1人、許六が小枝に刺したマツタケ2本の絵を添えたもの。狩野安信に絵を学び画技に優れていた許六を、芭蕉は絵の師として仰いでいた。その許六の『「ほとゝぎす」自画賛』は「ほとゝぎす勢田は鰻の自慢かな」の句に、瀬田の唐橋と飛ぶホトトギスを描いた作品。
「はつしぐれ猿も小みのをほしげなり」。芭蕉が奥の細道の旅を終え故郷伊賀の山中で詠んだこの句は最高傑作の1つといわれる。『芭蕉翁行脚図』は芭蕉の姿にこの句を添えたもので、俳人の島本青宜と円山四条派に日本画を学んだ平福穂庵の作品。四条派の絵師横山清暉の『芭蕉と蛙図』は上に芭蕉、下に1匹のカエルを描いただけだが、あの句「古池や……」が聞こえてきそうな雰囲気が漂う。
伝蕪村筆といわれる『芭蕉翁涅槃図』は1783年(天明3年)、芭蕉90回忌の作。釈迦入滅の涅槃図の構図を借りて、大坂で没した芭蕉の終焉の様子を描く。横たわる芭蕉を囲む多くの弟子たちの衣服には「許」「杉」「土」「越」「露」など俳号の一字が記されている。他の作品に芭蕉門人の杉風筆『「風鈴を」猫の画賛』、露川筆『「竹は花」自画賛』なども。