【原産地は中国、江戸時代中頃に渡来?】
多花性のつる性常緑低木。バラに特有のトゲがほとんどなく、病害虫にも強いとあって人気が高い。成長が早いため、庭のアーチやフェンスに絡ませて楽しむ人が多い。原産地は中国西南部だが、日本では江戸時代から庭で栽培されていたという。和名は漢名「木香花」の音読みから。「スダレ(簾)バラ」「スダレイバラ」ともいわれる。
モッコウバラといえば写真のような黄色い八重の花を連想しがち。ただ白花もあり、ともに一重と八重がある。磯野直秀氏の「明治前園芸植物渡来年表」によると、まず八重の白花が1760年に渡来し、黄花がやって来たのはそれからずっと後の1849年という。白花は黄花ほど多花性ではなく成長も遅いが、黄花にはない芳香を発するという特徴を持つ。
学名は「ロサ・バンクシアエ」。種小名の「バンクシアエ」は英国の著名な植物学者ジョゼフ・バンクス(1743~1820)の夫人にちなむ。モッコウバラは現在英国に留学中の秋篠宮家第一女子・眞子内親王の「お印」としても知られる。23年余り前の「命名の儀」で発表されてから、モッコウバラの人気も一段と高まった。
愛知県半田市の「萬三の白モッコウバラ」は市指定の天然記念物。明治の豪商「小栗家(萬三商店)」の庭にあるこのバラは樹齢推定約150年で、国内では最古・最大級といわれる。その花から取得した酵母を使った日本酒がこの4月、数量限定で発売された。ハートのような2本の幹のユニークな形にちなんで、その商品名は「愛してる」とか。