【ユキノシタ科、園芸種「アスチルベ」は多彩な花色】
ユキノシタ科アスチルベ属(チダケサシ属)の多年草。本州の東北~近畿や四国の山地に自生する。5~7月ごろ、茎の先に長い総状花序を伸ばし、白い小花をびっしり付ける。名前は外見がキンポウゲ科のショウマ類の植物に似て、根茎が赤みを帯びることから。
同じ仲間のアスチルベ属に花が淡紅白のチダケサシやアワモリショウマ、トリアシショウマなど。トリアシショウマは直立した茎が3つに枝分かれする様子を鳥の足にたとえたという。この他にも様々な変種が各地に分布する。ヒメアカショウマは全体的に小ぶりで四国に自生する。ハナチダケサシは中部山岳地帯、葉にツヤがあるテリハアカショウマやツクシアカショウマは九州に分布する。
属名と同じ「アスチルベ」の名前で、ドイツを中心に品種改良された多くの園芸品種が出回っている。その多くが日本のアワモリショウマとキネンシス種と呼ばれる中国原産のアスチルベの交配によって生まれた。園芸種には草丈が10cm台の矮性種から1m近いものまであり、花色も白のほか赤やピンク、暗褐色など多彩。泡粒のような小花が集まって咲く様子から「アワモリソウ(泡盛草)」とも呼ばれる。
同じショウマでもキンポウゲ科とユキノシタ科では植物分類学上全く別物。キンポウゲ科のサラシナショウマなどの根茎は古くから解熱や解毒作用のある生薬として用いられてきた。一方、ユキノシタ科のアカショウマやアワモリショウマなども「赤升麻」と呼ばれ、その代用品として使われてきた。ツクシアカショウマは環境省のレッドリストで準絶滅危惧種。