【別名「サツマウツギ」、欧州に渡って交配親に】
アジサイ科(またはユキノシタ科)バイカウツギ属の落葉低木で、本州、四国、九州の山地に自生する。バイカウツギ属は日本のほか中国、欧州、北米など北半球に広く分布する。その数、30種とも60種とも。ヨーロッパを中心に品種改良されてきた「セイヨウバイカウツギ」は日本のバイカウツギより成長が早く、花はやや大型で芳香も強いのが特徴。
学名は「Philadelphus satsumi」。属名の「フィラデルフス」は紀元前3世紀のエジプト王、プトレマイオスⅡ世フィラデルフスに因むそうだ。種小名の「サツミ」は「薩摩産」の意。この学名からバイカウツギには「サツマウツギ」という別名もある。ただ、九州での南限は宮崎―熊本で、鹿児島にはほとんど自生していないとも。
5~7月ごろ、枝先の集散花序に径3~4cmほどの純白の花を5~10個付ける。花に芳香があり形が梅に似ていることから「梅花空木」と命名された。ただ、梅の花弁が5枚なのに対しバイカウツギは4枚という違いがある。花に清楚な美しさがあることから古くから庭木や茶花、生け花の花材として好まれてきた。
変種に葉の裏に毛が多いニッコウバイカウツギ(別名ケバイカウツギ)、花がやや小さいシコクウツギ、両者の雑種ともいわれるアイノコバイカウツギなどがある。セイヨウバイカウツギのうちフランスで作出された「ベルエトワール」は大輪で中心部がうす紅色になることから「ヒノマルバイカウツギ」とも呼ばれる。秋田県で絶滅危惧Ⅰ類、千葉、鳥取、福岡県で準絶滅危惧種。