【地域によって様々な変異種。常盤・梅花・黄花…】
メギ科イカリソウ属(エピメディウム属)の多年草。基本種のイカリソウは主に本州、四国、九州の低山や丘陵地に自生する。早春から初夏にかけ、4枚の花弁と8つの花弁状の萼片から成る淡紫色の花を下向きに開く。花弁は先端から細長い筒状の距(きょ)が突き出す。距の中には昆虫を誘う蜜腺がある。和名のイカリソウはそのユニークな花の形を船のイカリに見立てて名付けられた。小葉の付き方から「サンシクヨウソウ(三枝九葉草)」という別名もある。
分布地域によって様々な変種があり、自然交雑種も多い。「トキワイカリソウ」(写真、2枚とも)は主に日本海側の山陰から近畿北部、北陸にかけて自生する。トキワは常緑を示す「常盤」で、冬でも落葉しないのが特徴。花の色には白と薄紫色のものがある。「バイカイカリソウ」は花の形が梅に似て、花弁には距がない。近畿以西の西日本に多く分布する。中国地方で見られる「オオバイカイカリソウ」はトキワとバイカの雑種といわれる。近畿~北海道の主に雪国の山地には花の色が黄色い「キバナイカリソウ」が自生する。
中国原産の「ホザキイカリソウ」は穂状の円錐花序を付ける。古くから漢方で「淫羊藿(いんようかく)」と呼ばれ、滋養強壮効果の高い生薬として使われてきた。その主成分イカリインは日本のイカリソウの仲間にも含まれ、国内でも民間薬などとして利用されてきた。イカリソウは欧米で花の形から「fairy wings(妖精の翼)」や「bishop's hat(司教の帽子)」とも呼ばれているそうだ。「碇草生れかはりて星になれ」(鷹羽狩行)