【国内自生地は伊勢神宮と静岡、熊本の3カ所】
マンサク科の小高木(高さ3~6m)。細長いリボン状の4枚の花弁からなる白い花が数個ずつ集まって、枝先や葉の付け根から放射状に伸びる。早春他の木々に先駆けて黄色い花を付けるマンサクが落葉樹なのに対し、トキワマンサクは常緑樹のため冬でも落葉しない。分類上もマンサク属、トキワマンサク属と異なる。マンサクの語源には「まず咲く」からの転訛や、花が木全体を覆い尽す様子から「満作」などいくつかの説がある。
学名は「Loropetalum chinense(ロロペタルム。シネンセ)」。属名は「革紐」と「花弁」の合成語、種小名は「中国の」を意味する。トキワマンサクは日本や中国南部、台湾、ヒマラヤ東部などに分布する。ただ日本で自生が確認されているのはわずか3カ所にすぎない。90年前の1931年に発見された三重県の伊勢神宮、その後見つかった静岡県湖西市神座と熊本県荒尾市の小岱山。湖西市のトキワマンサクは北限群生地として静岡県指定天然記念物に、小岱山のものも熊本県の特定希少野生植物と荒尾市指定天然記念物になっている。
変種に花色が濃いピンクのベニバナトキワマンサク(またはアカバナトキワマンサク)がある。こちらは中国原産。赤紫色になる銅葉も美しいため庭木や公園樹などとして植えられることが多い。よく似た名前のものにベニマンサクがあるが、これは落葉樹のマルバノキの別名。環境省は国内の自生地が限られるトキワマンサクを、近い将来絶滅の危険性が高いとして絶滅危惧ⅠB類に指定している。静岡県湖西市は毎年4月開花に合わせ「トキワマンサクまつり」を開いてきた。しかし新型コロナウイルスのため昨年に続き今年もやむなく中止することになったそうだ。