く~にゃん雑記帳

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<大和文華館>「中国青花と染付磁器―京都の鹿背山焼」

2021年03月14日 | 美術

【青花・染付など85点、有田や長崎・亀山焼も】

 大和文華館(奈良市学園南)で特別企画展「中国青花と染付磁器―京都の鹿背山焼」が開かれている。青花(せいか)は下地の白磁にコバルトを含む顔料で直接絵付けし透明釉をかけた磁器。元時代(1279~1368)の14世紀中頃に生まれ、明時代(1368~1644)に中国から海外へ盛んに輸出された。藍色の美しい発色の文様は世界で絶賛され、日本では江戸時代初めに青花を手本にして染付が誕生した。この企画展では有田焼や京都の鹿背山焼(かせやまやき)などを通じて、中国の青花が日本でどう受容され展開していったのかを探る。4月4日まで。

 会場には「中国の青花と五彩」「日本の染付:中国陶器の写しと展開」「鹿背山焼と中国陶磁」の3つのテーマごとに計85点の壷や鉢、皿、水指、徳利などが並ぶ。入り口正面には各テーマを代表する磁器3点。右の小さな香炉「青花鹿文香炉」(京都国立博物館蔵)は中国・明末期の景徳鎮窯製。真ん中の「染付山水文大皿」(文華館蔵)は直径45.4cmの大皿で、初期伊万里の代表作として重要文化財に指定されている。左の鹿背山焼「吹墨手鹿桜紅葉文鉢」(木津川市教育委員会蔵)は素地に型紙の文様を当てて顔料を吹き付ける〝吹墨(ふきずみ)〟の技法による。

 会場に入るとまず文華館蔵のものを中心に明時代初期~清時代の景徳鎮窯の青花や五彩が40点ほど並ぶ。五彩は釉薬をかけて焼いた白い素地の上に多色の絵具で文様を描き再び焼き上げたもの。続いて展示されているのは青花を写した有田の染付や、五彩の技法を取り入れた有田の色絵の大皿や小鉢など。有田以外では江戸後期に長崎奉行の命で開かれた亀山焼の鉢や、京都で活躍した陶芸家青木木米(1767~1833)と永楽保全(1795~1854)の小品も。この2人は〝祥瑞(しょんずい)〟など中国陶磁の写しに精力的に取り組んだことで知られる。木米は加賀九谷焼の再生に尽くし、保全も作陶指導のため紀州など各地に出かけた。

 中国の青花・五彩は肥前・有田で染付・色絵として花が開くが、京都でも江戸後期から明治にかけ現在の京都府木津川市鹿背山で青花を写した精緻な文様の鹿背山焼が焼造された。会場には木津川市教委蔵を中心に約20点の鹿背山焼が並ぶ。青花を手本に染付が誕生して約400年。斬新な中国磁器を最初に目にした人々の驚きはいかばかりだったのだろうか。自らの手で中国に劣らない磁器を作り上げたい――。当時の陶芸家たちはそんな思いを募らせ、ほとばしる情熱に駆られて作陶に励んだに違いない。

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