爺が県北の田舎の小学校に入学したのは昭和14年である。当時の道路は、穴ぼこだらけの砂利道で、時々荷物を運ぶ馬車か牛車が往来する程度で、登下校時に自動車に会うことは無かった。
たまに町で停車中の貨物自動車を見つけると、一目散に近寄り、発車するまで待って、後に残る排気ガスの匂いを嗅いでた覚えがある。まして交通安全と言う言葉とは無縁の時代だった。
路上には馬糞や牛フンが所々に散在しており、乾燥するか風雨で自然になくなるまで取り除くことはない。交通事故の危険はないが、うっかり穴ぼこに足を取られたり、糞を踏むことはあった。
今では遠い昔のことだが、道路全体が歩道であり、遊び場として利用しながらの通学である。荷馬車に出会えば、荷台に乗せてもらったり、無断で乗っても叱られることも無い、ゆったりした時代だった。