爺より一昔先輩のAさん(故人) 親族一同から是非にと選ばれた婿養子だそうで、「お金も着物も要らないが貴方一人が・・・・」と歌の文句どおりに迎えられた幸せ者。
Aさんとは20年前の出会い、温厚、まじめな御仁というのが印象で、聞けば同じ職種の先輩。
話好きの奥さん、家では頑固で、威張っているご主人の様子を隠すことなく喋り捲る、多少割引いても、亭主関白だったよう。
晩年は、体調が優れず、特に足腰がままならず、一人で杖を頼りに病院通い。
いつか、病院からの帰り道、自宅近くまで来た所で、電柱に寄りかかり一休みしている姿を見た爺、Aさんを自宅まで送ろうとするが、他人には甘えようとはしない、一言、ばさ(奥さん)を呼んできてくれと。
この様子を2階の窓から見ていた奥さん、直ちに迎えに行こうとしない。
日ごろのご主人に対する、ささやかな抵抗であったようだが、やっぱり大切なお婿さん、しぶしぶ、お迎えに向かう。