昨日“蜀江水碧蜀山青”と、成都の春の風景を歌っておると書いたのですが、この「水碧」、「山青」は、元々、白居易と同じ唐の先輩の杜甫の詩に見ることができます。(杜甫が死去した時に白居易は生まれております)
杜甫は、実際、一時、成都に移り住んだことがあるのですが、その時に作られた歌がありますのでご紹介します。
これも,また,私の自慢話みたいになって恐縮ですがお見せします。(杜工部集巻十三;安政年間)
彼の「絶句二首」から
お分かりのように、二首目に見えます。「江碧にして鳥愈よ白く。山青くして花燃えんと欲す」と。これは完全なる白居易の盗作となると思うのですが、そこが只の盗作ではありません。その成都の春の燃えんばかりの風景の中にいるにもかかわらず玄宗皇帝のそのやるせない感情
“朝々暮々の情”
を書き表すために、敢て、先輩杜甫のこの詩の一部を取り入れることによって、より文学的な価値を高める効果を狙っての事だと思われます。
尚、蛇足ですが、杜甫は安禄山の反乱に対する思いを詩に書き現わしておりますので、老婆心ながら、ご紹介しておきます。
“万国尚戎馬 故園今若何 昔帰相識少 早已戦場多”
と。
<故郷は戦場になっており、我が故郷落陽は今いったいどうなっていることやら。昔から知っている人も、此の戦禍を避けて何処かへ行ってしまって少なくなってしまっていることだろう。どこもかしこも戦場と化していることだろう>
というぐらいの意味になりはしないかと思います???