

上の欠けた月が冴え冴えとして、屋根の真上に上がっています。
貴女はもう家に帰っていますか?
忙しい貴女に連絡をするのも控える日々でしたが、突然に、昼間に電話が掛かって来たのにはびっくりしました。
「お母さん、大丈夫?今ほら揺れてるよ。聞こえるでしょ、社内放送で緊急事態を知らせているのよ」
私はその電話を受けても事態が飲み込めなかったわ。だって何事も起こってないのですもの。
「TV見て。宮城で大変なのよ」
「宮城?京都の貴女が揺れてるの?」
間の抜けた返事をしていましたが、TVを見てびっくりしました。遠く離れた京都まで揺るがす大地震が起こっていたのです。
お父さんも帰ってくるなり、貴女の携帯を鳴らそうとしました。
貴女が東京にいると思ってのことでした。
「大丈夫。kちゃんは今京都よ。向こうから<こちらは大丈夫か>って」
日頃疎通のない親子でも、こんな時は引き合うのね。
老眼鏡を掛けるのも忘れて、携帯に貴女の名前を探すお父様の姿は印象的でした。
被害はまだ定かではありませんが、つなみのすごさにぼう然としました。
上がる火の手に母はあの神戸の震災を思い出し、その後元気を無くしました。
マグニチュード8.8。未曾有の巨大地震です。朝の明けるのが恐いです。どんな被害が現われてくるのかと思うと眠れそうにありません。
悲しいですね。自然災害の前には太刀打ち出来ないのですね。
こうして、何度も何度も災害は繰り返され、打ちのめされて。
kちゃん、今日はありがとう。それしか言えないけれど、元気でいてね。
月も凍えるように冷えて来ました。一刻も早く家に帰って下さい。