前頁からのツヅキ・・・
ーーーーー
枕草子
(一四五段)・・・百四十五段・壱佰四拾五段・壱四五段・陌肆足伍段
1+4+5=10=十=拾=足
1×4×5=20=二十=弐拾=念
なほ(猶)・・・なほ・名捕・拿保
尚・直・奈央・奈緒
世に・・・・・「与・代・予・預
豫・輿・余・夜・譽」爾
めで・・・・・・目出・眼で・芽出・愛で
たき・・・・・・多紀・瀧・滝・多岐・多気・多伎
炊き・焚き
他記・多紀
もの・・・
臨時の・・・・・臨字之
綸旨(リンジ)
↓
蔵人が天皇の意を受けて発給する命令文書
「綸言の旨」の略
天皇の口宣を元にして蔵人が作成
発給した公文書の要素を持った奉書
「りんし」とも
天子などの命令・また、その内容
綸命
料紙は
薄墨色の宿紙(シュクシ)を用いた
礼記(ライキ)に
〈王言如糸,其出如綸,王言如綸,其出如綍〉
に由来・天子の言葉を綸言という
平安時代中期以後は天皇の口宣を元にして
蔵人が作成・発給した公文書
その内容を綸命(リンメイ)という
「宣旨」より手続きが簡略
「天皇の命の主旨」を書いて蔵人がの名義で発行
宣旨・院宣・令旨
ーー↓
祭の・・・・・・まつりの・真通理之
御前・・・・・・おんまえ・音真得・ゴゼン・語膳・語全
ばかりの・・・・秤之
事は、・・・・・言葉
何事・・・・・・何字
にか・・・・・・似化
あらん。・・・
試樂も・・・・・シヤクも・詞訳摸・史訳模
いと・・・・・・意図
をかし。・・・・可笑し・おかし・犯し
御菓子
音可視・音歌詞
冒し・犯し
春は空のけしきのどかにて、
(ハルはアキの景色、ノドカ→長閑→咽喉禍)
うらうらとあるに、
(裏、裏、賭、有る爾)
清涼殿の御前の庭に、
(声量伝之、音全之、似話、爾)
掃部司のたたみ(畳)どもを敷きて、
ーー↓
「かもんりょう(掃部寮)」、
「掃司(ソウシ) 」に同じ
内掃部司
↓
律令制で、
宮内省に属し、
宮中の→みやなか→天文学の十二宮
視や名化
キュウチュウ
旧中・・・・旧事記→クジキ→挫き
九中・・・・九州の中
句注(註)・日本書記の注
九柱・・・・柱は子供の数
↓
五音音階の宮
↓
宮(きゅう)=ド(Do)
商(しょう)=レ(Re)
角(かく)=ミ(Mi)
中国伝統音楽には
「ファ」に相当する音がない
徴(ち)=ソ(Sol)
羽(う)=ラ(La)
↓
後に変宮(宮の低半音)と
変徴(徴の低半音)が加えられ、
七声または七音とされた
↓
音階、音声の象徴的身分
宮=君主
商=臣下
角=民
徴=事
羽=物
↓
実際の中国音楽
音高は十二律によって確定され
理論上、各十二律で、
五声の各音すべてを確定可能
五声では六十宮調
七声では八十四宮調
宮を主音とする
調式を「宮」
その他の各音を主音とする
調式を「調」と呼んだ
八十四調式は十二宮七十二調、
合わせて
八十四宮調
↓
燕楽では七宮二十一調
北曲では六宮十一調
南曲では五宮八調のみが使われた
ーー↓
掃部司は
調度品の
調達、
管理の役所
弘仁十一年(820)
大蔵省掃部司(かもんづかさ)と
合併し
掃部寮(かもんりょう)となった
↓
「うちのかにもりのつかさ」
伴部の掃部が付属して
清掃・設営にあたった
官司に配属される
駆使丁が
80人が配属され実務
大蔵省掃部司と
宮内省内掃部司が
統合されて成立
掃部司(ソウブシ・かにもりのつかさ)
職掌朝廷行事の
設営業務、清掃業務をおこなった
内掃部司
(ナイソウブシ・うちのかにもりのつかさ)
職掌宮中行事の設営業務と清掃業務を担当
調度品の調達・管理をつかさどった役所
ーー↓
使は北おもてに、
(北=背)
舞人は御前のかたに、
(トウジン→唐人・問う事務・問う寺務
まいびと→毎人・真意備賭)
これらは僻事にもあらん。
↓
(僻事=間違い・誤り・過ち
「ひがこと」・・・道理や事実に合わないこと・
道理にはずれたこと・よこしまなこと・ひがごと)
衝重どもとりて前ごとに居ゑわたし、
(衝=ショウ・つく・・・衝突・衝撃
↓
「opposition」は、
位置天文学や
占星術において、
ある観測点(地球)から太陽系天体を見た時に、
その天体が太陽と正反対の位置にある状態
地球から見たその天体と太陽の黄経の差が
180度となる瞬間点
要所・重要な立場
必ず通る道や地点・要所
大事な任務
惑星,小惑星,すい星,月が,
地球から見て太陽と正反対の方向に見えるとき
太陽とそれらの天体の
視黄経の差が
180゜になった瞬間で
内惑星には衝は存在しない
重=ジュウ・チョウ・かさななる・え・おもい)
ーー↓
陪從もその日は御前に出で入るぞかし。
(陪從=バイジュウ・ベイジュウ・みとものかみ)
公卿殿上人は、
(「苦行・公暁・九行」、伝承比渡葉)
かはるがはる盃とりて、
(変わる、臥割る、葉意採りて)
はて・・・葉出
には・・・爾葉
やく・・・訳
が・・・・臥・画・賀
ひと・・・比渡
いふ・・・意附
物、・・・モノ
男などのせんだにうたてあるを、
(おとこ→音故
等之
せんだに→撰拿似
うたて=失望する・嫌だ・情けない・気にくわない)
御前に女ぞ出でて取りける、
(音潜・音名)
思ひかけず人やあらんとも知らぬに、
(重意懸けず、比渡)
火燒屋よりさし出でて、
(「歌唱・仮称・寡少・嘉承・迦葉」也)
多く取らんと騒ぐものは、
(太句・緒補句・於保句)
なかなかうちこぼしてあつかふ程に、
(名化・納掛)
かろらかにふと取り出でぬるものには遲れて、
(化賂等掛爾、附賭→太)
かしこき納殿に、
(納殿→納伝→能生伝)
火燒屋をして、
(「歌唱・仮称・寡少・嘉承・迦葉」也)
取り入るるこそ
をかしけれ。
(オカシけれ)
掃部司のものども、
(創部詞・双節・想武史)
たたみとるやおそきと、
(多々見取る也、遅き→晩き・於蘇記)
主殿司の官人ども、
(主伝史)
手ごとに箒とり、
(出言爾、箒→「放棄・法規・蜂起」賭理)
すなごならす。
(素名語納等諏・砂子鳴らす)
承香殿の前のほどに、
笛を吹きたて、
拍子うちて遊ぶを、
疾く出でこなんと待つに、
有度濱うたひて、
竹のませのもとに歩み出でて、
御琴うちたる程など、
いかにせんとぞ覺ゆるや。
一の舞のいとうるはしく袖をあはせて、
二人はしり出でて、
西に向ひて立ちぬ。
つぎつぎ出づるに、
足踏を拍子に合せては、
半臂の緒つくろひ、
冠袍の領などつくろひて、
あやもなきこま山などうたひて舞ひ立ちたるは、
すべていみじくめでたし。
大比禮など舞ふは、
日一日見るとも飽くまじきを、
終てぬるこそいと口惜しけれど、
又あるべしと思ふはたのもしきに、
御琴かきかへして、
このたびやがて竹の後から舞ひ出でて、
ぬぎ垂れつるさまどものなまめかしさは、
いみじくこそあれ。
掻練の下襲など亂れあひて、
こなたかなたにわたりなどしたる、
いで更にいへば世の常なり。
このたびは又もあるまじければにや、
いみじくこそ終てなん事は口惜しけれ。
上達部なども、
つづきて出で給ひぬれば、
いとさうざうしう口をしきに、
賀茂の臨時の祭は、
還立の御神樂などにこそなぐさめらるれ。
庭燎の烟の細うのぼりたるに、
神樂の笛のおもしろうわななき、
ほそう吹きすましたるに、
歌の聲もいとあはれに、
いみじくおもしろく、
寒くさえ氷りて、
うちたるきぬもいとつめたう、
扇もたる手のひゆるもおぼえず。
才の男ども召して飛びきたるも、
人長の心よげさなどこそいみじけれ。
里なる時は、
唯渡るを見るに、
飽かねば、
御社まで行きて見るをりもあり。
大なる木のもとに車たてたれば、
松の烟たなびきて、
火のかげに半臂の緒、
きぬのつやも、
晝よりはこよなく勝りて見ゆる。
橋の板を踏みならしつつ、
聲合せて舞ふ程もいとをかしきに、
水の流るる音、
笛の聲などの合ひたるは、
實に神も嬉しとおぼしめすらんかし。
少將といひける人の、
年ごとに舞人にて、
めでたきものに思ひしみけるに、
なくなりて、
上の御社の一の橋のもとにあなるを聞けば、
ゆゆしう、
せちに物おもひいれじと思へど、
猶このめでたき事をこそ、
更にえ思ひすつまじけれ。
「八幡の臨時の祭の名殘こそいとつれづれなれ。
などてかへりて又舞ふわざをせざりけん、
さらばをかしからまし。
禄を得て後よりまかづるこそ口惜しけれ」
などいふを、
うへの御前に聞し召して、
「明日かへりたらん、
めして舞はせん」
など仰せらるる。
「實にやさふらふらん、
さらばいかにめでたからん」
など申す。
うれしがりて、
宮の御前にも、
「猶それまはせさせ給へ」
と集りて申しまどひしかば、
そのたびかへりて舞ひしは、
嬉しかりしものかな。
さしもや有らざらんと打ちたゆみつるに、
舞人前に召すを聞きつけたる心地、
物にあたるばかり騒ぐもいと物ぐるほしく、
下にある人々まどひのぼるさまこそ、
人の從者、
殿上人などの見るらんも知らず、
裳を頭にうちかづきてのぼるを、
笑ふもことわりなり。
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・・・
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枕草子
(一四五段)・・・百四十五段・壱佰四拾五段・壱四五段・陌肆足伍段
1+4+5=10=十=拾=足
1×4×5=20=二十=弐拾=念
なほ(猶)・・・なほ・名捕・拿保
尚・直・奈央・奈緒
世に・・・・・「与・代・予・預
豫・輿・余・夜・譽」爾
めで・・・・・・目出・眼で・芽出・愛で
たき・・・・・・多紀・瀧・滝・多岐・多気・多伎
炊き・焚き
他記・多紀
もの・・・
臨時の・・・・・臨字之
綸旨(リンジ)
↓
蔵人が天皇の意を受けて発給する命令文書
「綸言の旨」の略
天皇の口宣を元にして蔵人が作成
発給した公文書の要素を持った奉書
「りんし」とも
天子などの命令・また、その内容
綸命
料紙は
薄墨色の宿紙(シュクシ)を用いた
礼記(ライキ)に
〈王言如糸,其出如綸,王言如綸,其出如綍〉
に由来・天子の言葉を綸言という
平安時代中期以後は天皇の口宣を元にして
蔵人が作成・発給した公文書
その内容を綸命(リンメイ)という
「宣旨」より手続きが簡略
「天皇の命の主旨」を書いて蔵人がの名義で発行
宣旨・院宣・令旨
ーー↓
祭の・・・・・・まつりの・真通理之
御前・・・・・・おんまえ・音真得・ゴゼン・語膳・語全
ばかりの・・・・秤之
事は、・・・・・言葉
何事・・・・・・何字
にか・・・・・・似化
あらん。・・・
試樂も・・・・・シヤクも・詞訳摸・史訳模
いと・・・・・・意図
をかし。・・・・可笑し・おかし・犯し
御菓子
音可視・音歌詞
冒し・犯し
春は空のけしきのどかにて、
(ハルはアキの景色、ノドカ→長閑→咽喉禍)
うらうらとあるに、
(裏、裏、賭、有る爾)
清涼殿の御前の庭に、
(声量伝之、音全之、似話、爾)
掃部司のたたみ(畳)どもを敷きて、
ーー↓
「かもんりょう(掃部寮)」、
「掃司(ソウシ) 」に同じ
内掃部司
↓
律令制で、
宮内省に属し、
宮中の→みやなか→天文学の十二宮
視や名化
キュウチュウ
旧中・・・・旧事記→クジキ→挫き
九中・・・・九州の中
句注(註)・日本書記の注
九柱・・・・柱は子供の数
↓
五音音階の宮
↓
宮(きゅう)=ド(Do)
商(しょう)=レ(Re)
角(かく)=ミ(Mi)
中国伝統音楽には
「ファ」に相当する音がない
徴(ち)=ソ(Sol)
羽(う)=ラ(La)
↓
後に変宮(宮の低半音)と
変徴(徴の低半音)が加えられ、
七声または七音とされた
↓
音階、音声の象徴的身分
宮=君主
商=臣下
角=民
徴=事
羽=物
↓
実際の中国音楽
音高は十二律によって確定され
理論上、各十二律で、
五声の各音すべてを確定可能
五声では六十宮調
七声では八十四宮調
宮を主音とする
調式を「宮」
その他の各音を主音とする
調式を「調」と呼んだ
八十四調式は十二宮七十二調、
合わせて
八十四宮調
↓
燕楽では七宮二十一調
北曲では六宮十一調
南曲では五宮八調のみが使われた
ーー↓
掃部司は
調度品の
調達、
管理の役所
弘仁十一年(820)
大蔵省掃部司(かもんづかさ)と
合併し
掃部寮(かもんりょう)となった
↓
「うちのかにもりのつかさ」
伴部の掃部が付属して
清掃・設営にあたった
官司に配属される
駆使丁が
80人が配属され実務
大蔵省掃部司と
宮内省内掃部司が
統合されて成立
掃部司(ソウブシ・かにもりのつかさ)
職掌朝廷行事の
設営業務、清掃業務をおこなった
内掃部司
(ナイソウブシ・うちのかにもりのつかさ)
職掌宮中行事の設営業務と清掃業務を担当
調度品の調達・管理をつかさどった役所
ーー↓
使は北おもてに、
(北=背)
舞人は御前のかたに、
(トウジン→唐人・問う事務・問う寺務
まいびと→毎人・真意備賭)
これらは僻事にもあらん。
↓
(僻事=間違い・誤り・過ち
「ひがこと」・・・道理や事実に合わないこと・
道理にはずれたこと・よこしまなこと・ひがごと)
衝重どもとりて前ごとに居ゑわたし、
(衝=ショウ・つく・・・衝突・衝撃
↓
「opposition」は、
位置天文学や
占星術において、
ある観測点(地球)から太陽系天体を見た時に、
その天体が太陽と正反対の位置にある状態
地球から見たその天体と太陽の黄経の差が
180度となる瞬間点
要所・重要な立場
必ず通る道や地点・要所
大事な任務
惑星,小惑星,すい星,月が,
地球から見て太陽と正反対の方向に見えるとき
太陽とそれらの天体の
視黄経の差が
180゜になった瞬間で
内惑星には衝は存在しない
重=ジュウ・チョウ・かさななる・え・おもい)
ーー↓
陪從もその日は御前に出で入るぞかし。
(陪從=バイジュウ・ベイジュウ・みとものかみ)
公卿殿上人は、
(「苦行・公暁・九行」、伝承比渡葉)
かはるがはる盃とりて、
(変わる、臥割る、葉意採りて)
はて・・・葉出
には・・・爾葉
やく・・・訳
が・・・・臥・画・賀
ひと・・・比渡
いふ・・・意附
物、・・・モノ
男などのせんだにうたてあるを、
(おとこ→音故
等之
せんだに→撰拿似
うたて=失望する・嫌だ・情けない・気にくわない)
御前に女ぞ出でて取りける、
(音潜・音名)
思ひかけず人やあらんとも知らぬに、
(重意懸けず、比渡)
火燒屋よりさし出でて、
(「歌唱・仮称・寡少・嘉承・迦葉」也)
多く取らんと騒ぐものは、
(太句・緒補句・於保句)
なかなかうちこぼしてあつかふ程に、
(名化・納掛)
かろらかにふと取り出でぬるものには遲れて、
(化賂等掛爾、附賭→太)
かしこき納殿に、
(納殿→納伝→能生伝)
火燒屋をして、
(「歌唱・仮称・寡少・嘉承・迦葉」也)
取り入るるこそ
をかしけれ。
(オカシけれ)
掃部司のものども、
(創部詞・双節・想武史)
たたみとるやおそきと、
(多々見取る也、遅き→晩き・於蘇記)
主殿司の官人ども、
(主伝史)
手ごとに箒とり、
(出言爾、箒→「放棄・法規・蜂起」賭理)
すなごならす。
(素名語納等諏・砂子鳴らす)
承香殿の前のほどに、
笛を吹きたて、
拍子うちて遊ぶを、
疾く出でこなんと待つに、
有度濱うたひて、
竹のませのもとに歩み出でて、
御琴うちたる程など、
いかにせんとぞ覺ゆるや。
一の舞のいとうるはしく袖をあはせて、
二人はしり出でて、
西に向ひて立ちぬ。
つぎつぎ出づるに、
足踏を拍子に合せては、
半臂の緒つくろひ、
冠袍の領などつくろひて、
あやもなきこま山などうたひて舞ひ立ちたるは、
すべていみじくめでたし。
大比禮など舞ふは、
日一日見るとも飽くまじきを、
終てぬるこそいと口惜しけれど、
又あるべしと思ふはたのもしきに、
御琴かきかへして、
このたびやがて竹の後から舞ひ出でて、
ぬぎ垂れつるさまどものなまめかしさは、
いみじくこそあれ。
掻練の下襲など亂れあひて、
こなたかなたにわたりなどしたる、
いで更にいへば世の常なり。
このたびは又もあるまじければにや、
いみじくこそ終てなん事は口惜しけれ。
上達部なども、
つづきて出で給ひぬれば、
いとさうざうしう口をしきに、
賀茂の臨時の祭は、
還立の御神樂などにこそなぐさめらるれ。
庭燎の烟の細うのぼりたるに、
神樂の笛のおもしろうわななき、
ほそう吹きすましたるに、
歌の聲もいとあはれに、
いみじくおもしろく、
寒くさえ氷りて、
うちたるきぬもいとつめたう、
扇もたる手のひゆるもおぼえず。
才の男ども召して飛びきたるも、
人長の心よげさなどこそいみじけれ。
里なる時は、
唯渡るを見るに、
飽かねば、
御社まで行きて見るをりもあり。
大なる木のもとに車たてたれば、
松の烟たなびきて、
火のかげに半臂の緒、
きぬのつやも、
晝よりはこよなく勝りて見ゆる。
橋の板を踏みならしつつ、
聲合せて舞ふ程もいとをかしきに、
水の流るる音、
笛の聲などの合ひたるは、
實に神も嬉しとおぼしめすらんかし。
少將といひける人の、
年ごとに舞人にて、
めでたきものに思ひしみけるに、
なくなりて、
上の御社の一の橋のもとにあなるを聞けば、
ゆゆしう、
せちに物おもひいれじと思へど、
猶このめでたき事をこそ、
更にえ思ひすつまじけれ。
「八幡の臨時の祭の名殘こそいとつれづれなれ。
などてかへりて又舞ふわざをせざりけん、
さらばをかしからまし。
禄を得て後よりまかづるこそ口惜しけれ」
などいふを、
うへの御前に聞し召して、
「明日かへりたらん、
めして舞はせん」
など仰せらるる。
「實にやさふらふらん、
さらばいかにめでたからん」
など申す。
うれしがりて、
宮の御前にも、
「猶それまはせさせ給へ」
と集りて申しまどひしかば、
そのたびかへりて舞ひしは、
嬉しかりしものかな。
さしもや有らざらんと打ちたゆみつるに、
舞人前に召すを聞きつけたる心地、
物にあたるばかり騒ぐもいと物ぐるほしく、
下にある人々まどひのぼるさまこそ、
人の從者、
殿上人などの見るらんも知らず、
裳を頭にうちかづきてのぼるを、
笑ふもことわりなり。
ーーーーー
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