チャコちゃん先生のつれづれ日記

きものエッセイスト 中谷比佐子の私的日記

着物が繋ぐもの 82

2019年01月17日 11時02分31秒 | 日記
チャコちゃん先生はお師匠さんに恵まれていたと今思う
先日竺仙の展示会に行った時現社長がしみじみと
「ナカタニさんを大事にしないと親父に顔向けできない」
現代の名工浅野さんに無理難題の染をお願いしてそれを苦笑しながら見ていた社長の言葉がこれだった

着物の仕事を始めて初めてであった業界の人が竺仙の前会長小川茂男さん
「お品がないよ。そんな色比佐子さんを育てたご両親に申し訳ない」
私の着物の師匠であり言い合う相手でもあるおやっさん

雑誌撮影のために借りる着物の色に関しては「比佐子さんのセンスでどうぞ」と全てオーケー
しかし個人的に着る着物選びはとてもとても厳しかった
撮影のために着物を借りて返す。この単純な作業の中でその人のバックにある家庭のしつけ、その人自身の心の有り様知性など細かく観察しているのだ

観察している様子など微塵も見せずにこやかに応対しているが行儀が悪かったり着物の扱いが雑だったりすると
ピシッと背筋が伸び目に力が入って「うちではあなたに合う着物はない」と言い切ってしまうところに居合わせてこちらの体がブルッと震えたことがある
幸いなことに私とは言い合いはするが気があっておかげで着物が次々増えた

ちょっと軽い感じの浅葱色の着物を選ぶと
「比佐子さんそれはお女郎さんの色」
粋な墨色の小紋をえらぶと
「もっと年齢を重ねないとその色の品格を表現できないね」
赤と黒の大胆な染縞は
「比佐子さんにとても似合うねでもあなたが本来持っている優しさが出ないから飽きるよ」
「だって私は今こういうのを着たいのっ!」
「じゃあ合わせる帯に甘さを出そうかね」
「ふーーんじゃあ桜色の地色に赤と白の椿の柄を染めていただいたらどうかしら?」
「ほーそれはいい比佐子さんらしくなる」

染めの着物に染めの帯をあわせるという究極の優しさ表現もこの時教わった
着物は着る人の奥深いところを引き出さない限り、着物の良さは現れないことをおやっさんに叩き込まれたのだ

色にはそれぞれ季節やその人の育ち方があるので顔に当てて見るだけではなく
心を感じて色の心と共鳴した時その人の本質が現れて着た時お品が出るという
何よりも大切なのは「お品」
そうして「ご両親が喜ぶかな」
この2つがいつも基本にある

色ぎめのときはふたりとも必死
「この緑」
「この緑の色は待合の女将さんの色比佐子さんにはまだはやい」
「この紫」
「もうちょっと青みがかった紫のほうが若やぐね帯はどんなのあわせたい?」
「これこれこの薄鼠の地色に光琳の白梅は?」
「綺麗だけど比佐子さんが着ると顔とちぐはぐ」
「つまんないなあ このレモンイエローは?そして芍薬の花」
「おおいいね黄色の色をもっと薄くするとさらにいい」
「わーーい決まった!」
(この後続く)

#竺仙 #尾形光琳 #染めの着物 #染めの帯 #品格

コメント
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