天が必要だと認めるものは確実につながっていく
選定保存技術「在来絹制作」保持者に認定された志村明さん
この技術は、文化財の保存のために欠くことのできない技術や技能を持つ人に与えられる、伝統工芸保持者の人間国宝と同じようなもの
いえ
其れよりもっと深く責任のある技術保持かもしれない
この制度は昭和50年に創設されて、現在は82件の選定保持技術が認定されている
志村さんは令和3年「在来絹制作」選定保持者に認定されている
よくご存じの正倉院御物の中の絹製品、またその他の文化財の絹の補正や修理に必要な繊細な糸づくりは、その時代の技術をしっかり考察し、その素材がどうやって作られていたかの研究も欠かせない
「絹の糸づくり」を追求し続けた志村さんは、終生の土地長野県飯島に移り住んでからは、桑の栽培、蚕の飼育、いい糸を作るための繭の塩漬け方法、また生繰りの糸の取り方の工夫、更には手織り機の改造まで、そのうえで最も美しい絹の糸づくりを長年続けている
しかもここのところ自分で蚕の種づくりも初めた
昨年は能舞台で新作発表、其れも8領の着物の表と裏をそれぞれ違う組織にして制作し、着心地を感じるという初めての試み、今はそれらは文化財保存所に預けられている
こういう志村さんの仕事をきちんと受け継ぎさらに次の世代に繋げようとしているのが秋本賀子(しげこ)さん。20年余志村さんの傍で片時も離れず修行し、今では完全に志村イズムが身に付き、更に若い人を育て始めている
「志」が同じということはお互いの使命を理解し合える同士がいるということで、絹の為にも日本の文化財の為にも実に尊いことだ
昨日久しぶりにあった秋本さんから、この技術を継いで繋いでいく熱い思いを聞き、ただただ感動で言葉がなかった
こういう方に出会っている幸せは、私を謙虚にしてくれる