少し前のブログで、在宅勤務による身体への影響とその対策について書きました。
今回は、外出自粛などによるストレスの東洋医学的解釈と、その対処法について書きたいと思います。
人それぞれ環境や状況は異なりますが、これまで当たり前にできていたことができない生活が長引いています。私自身も日々痛感しているところですが、このことは心身共に大きな影響を及ぼします。
必要最小限の外出には買い物や運動が含まれますが、それすらもいろいろと配慮しながら、思い切り何かをするということが難しくなっています。
あれもこれも思うようにならないばかりか、目にしたり耳にしたりする情報で精神的に追い詰められている方も少なくないと思います。
東洋医学では、「正気(せいき)」が充実していると健康な状態である、と考えます。
この「正気」には5種類の作用があります。
・推動(すいどう)作用:血や水分を全身に巡らせる。身体を成長させたり、内臓が正常に働くようにする。
・温煦(おんく)作用:体温を調節して維持する。血行を良くして消化機能などを高める。
・防御作用:皮膚、毛穴、鼻、口を通して異物が身体の内側に侵入するのを防ぐ。→免疫力、環境や気候へ対応する抵抗力のこと。
・固摂(こせつ)作用:体内の血や水分が外に漏れ出さないように、身体にとって必要なものを保持する。発汗や尿量の調整も行う。
・気化作用:気と血と水などで身体に必要なものを生成、変化させる。余分な水分を汗や尿として排出する。
説明すると小難しい感じになりますが、要は身体を健康に丈夫に保ち、病気になるのを防ぐのが「正気」です。「正気」が十分にある時は病気になる心配がないのですが、不足してしまうと病気の原因となる「邪気」が侵入しやすくなります。外から侵入してくるもの(邪気)のことを「外邪」といいます。現代医学でいうところの細菌やウイルス(寄生虫も含むことがあります)はこれにあたりますが、冬の寒さや梅雨の湿気など気候による影響も「外邪」に含まれます。
病気の原因となる「邪気」は、人の身体の中でも発生します。
人には七情(しちじょう)と呼ばれる感情の働きがあり、怒・喜・憂・思・悲・恐・驚の七つの感情の変化のことをいいます。七情は五臓に直接影響します。怒りすぎると肝を、喜びすぎると心を、思いすぎると脾を、悲しみすぎたり憂いすぎたりすると肺を、恐れすぎたり驚きすぎたりすると腎を傷めます。
私たちが日々の生活の中で怒ったり悲しんだりするのは正常な感情活動であり、感情的になったからといって病気になることはありません。しかし、突然強いショックを受けたり、長い間一定の精神的ストレスを受け続けたり、限界を超える強いストレスを受け、その人が調節できる許容範囲を超えてしまうと五臓に影響を与えます。そうすると身体を守ってくれる「正気」が不足し病気になる場合があります。また身体のバリア機能が低下して、「外邪」の侵入を許しやすくなる病気が発生することもあります。
このことからも、私たちが健康に過ごすためには、いかに精神的なことが大きいか、ということが分かります。
現在私たちは、感染に対する恐怖感が募ったり、自由に行動できないことでイライラが募ったりという強いストレスにさらされています。
こんな状況においても、人が本来持っている免疫力を高めて維持するためには、できるだけ精神的にゆとりを持つ時間を少しでも多く過ごすことが大切です。
精神的にゆとりを持つために、簡単にできて効果が高いのは深呼吸です。
立った状態でも、椅子に腰掛けた状態でも、起き上がるのが辛い方は寝たままでも構いません。
おへその下あたりに手を置き、口からゆっくりと息を吐きます。その際、おへその下に置いた手が凹むまでしっかり吐き切るのがポイントです。(難しい方は手で押すようにして息を吐き出してみてください。)
息を吸う時は、吸うということを意識しすぎずに、お腹を緩ませて自然に入ってくるような感じにしてみてください。慣れるまでは5回を目安に。慣れてきたら少しずつ回数を増やして、30回を上限として行います。夜、眠る前がおすすめですが、朝、目が覚めたときでもいいと思います。満腹状態でなければいつでも行っても構いません。これによって自律神経が調整されて、同時に体幹の筋肉も鍛えることができます。
そしてもう1つ免疫力を維持するために大切なのは、1日のうちに少しでも自分が楽しいと感じられるひと時を持つこと。
例えば、目の使いすぎにに気を付けながら、美しい景色やかわいい動物の動画を観たりするのも良いと思います。なかなか観る機会のなかった映画を楽しむのもいいですね(気が晴れるなら、ゲームを思いっきりやるのも良いかもしれませんね)。
普段花を飾る習慣のない方でも、一輪でも家の中に飾っておくと見る度に心がほっとすると思います。
周りの環境が許せば、歌を歌うのも良いと思います。声を出すことで鬱々とした気が発散されるので、1人でもご家族みんなと一緒でも、ぜひ歌ってみてください。
とにかく、何事も過ぎることは禁物なので、程よく休息をとりながらのんびりと、それぞれの生活を楽しむようにする。そんなことは無理だという思いがちらついても、まずはやってみることをおすすめします。