はりぶろぐ

鍼灸師のブログです。東京都国分寺市にて孔和堂鍼灸院を開業しています。
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鍼灸治療院の選び方 その2

2021-04-24 08:36:00 | 鍼灸

前回のブログでは、鍼灸治療を行うために必要な資格のことや治療院の種類について書きました。

今回は、東洋医学的な鍼灸治療について説明したいと思います。

 

東洋医学的な鍼灸治療と書きましたが、鍼灸ってそもそも東洋医学じゃないの?と思う方がいるかもしれません。

鍼灸が東洋医学であることは間違いないのですが、西洋医学的な概念に基づいて行う鍼灸治療もあります。コリや痛みのある部分に直接刺したり、症状の出ている筋肉の起始・停止部に施術を行ったりする治療です。超音波(エコー)で患部の状態を把握しながら治療を行う鍼灸院も増えてきているようで、筋肉疲労等による痛みに対する治療としては効果が高いと思われます。

(以前このブログで書いた記事もありますので、興味のある方はこちらをご覧ください。)

※ちなみに、柔道整復師による治療は東洋医学ではありません。柔道整復師に加えて、はり師・きゅう師の国家資格を取得している方の治療は東洋医学に基づいた場合もありますが、どちらかというと西洋医学的な解釈に基づく治療が多いようです。

 

対して、東洋医学的な鍼灸治療では、東洋医学的な概念に基づき施術部位を検討します。経穴(ツボ)を選ぶために脈・舌・お腹等を診るのが特徴です。治療にあたり、症状の出ている部位に関係している経絡(ツボの通り道)と経穴(ツボ)に施術することが多いのですが、一見関係ないような経絡・経穴を用いて治療することもあります。もしろこの方が著効をもたらすことが多々あります。

 

当院は東洋医学的な鍼灸治療を行っています。

関節や筋肉の痛みであれば、東洋西洋どちらの鍼灸治療でも効果がありますが、東洋医学的な鍼灸治療は、体全部を診て全身のツボを使って治療していくので、メインの症状プラスアルファの効果も望めます。

ところで、東洋医学的な鍼灸治療を行なってるからといっても、同じ治療をするとは限りません。たとえ同じ流派であっても全く同じ経穴を選ぶことはないです。鍼灸師ごとに経穴(ツボ)を探る時の手の感覚も異なるので、患者さんから得られる情報にも違いが出ます。特に、脈は触れた瞬間に変化が始まることもあるので、共通認識を持ちづらい側面があります。
 
治療する際にも、鍼治療では施術者の経験や技術によって刺激量(鍼の太さや刺し方等)が人それぞれ変わります。灸治療では、もぐさの種類(すぐに熱くなるかゆっくり熱くなるか等)や用い方(沢山すえるか少しだけすえるか、直接すえるか間接的に据えるか等)が変わります。
 
鍼灸師によって患者さんの体質の見極めや治療方法が異なるため、自分に合った鍼灸院を見つけるのは大変です。今の自分の症状と今後どのように体と向き合っていくかを考えた上で、鍼灸院を選んで頂くのが良いかと思います。
 
それでも鍼灸は敷居が高いと感じるならば、気になる鍼灸院にまず症状を相談してみてはいかがでしょうか。誠実な対応をしてくれるかどうかで判断するのも良いかと思います。
急性期の症状であれば一度で完治することもありますが、多くは数回治療が必要になりますので、自分に合った長く通える鍼灸院を見つけて頂きたいです。
 
以上、鍼灸院の選び方について、ご参考になれば幸いです。
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鍼灸院の選び方 その1

2021-04-23 08:45:56 | 鍼灸
最近患者さんと話していて感じるのは、コロナ禍になって不調を感じても病院に行きづらいと思っている方が多いことです。そのような状況もあってか、鍼灸治療に興味を持ち始めた方もいるようです。
年々鍼灸治療院の数も増えてきていますし、どこの治療院に行けば良いか悩んでいる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
 

鍼灸治療を行うには国家資格が必要です。鍼治療には「はり師」、灸治療には「きゅう師」のそれぞれの国家資格が必要です。

似ている国家資格としては「あん摩マッサージ指圧師」「柔道整復師」があります。マッサージという言葉はよく耳にすると思いますが、治療としてのマッサージを名乗るためには「あん摩マッサージ指圧師」の国家資格が必要です。

※国家資格を取得していないと「治療」という名称は使用できません。来院する人のことを「患者」と言うのにも国家資格が必要です。「整体」「リフレソクロジー」「カイロプラクティック」等の名前がついた店舗がありますが、これらは国家資格が必要ではありません。「〇〇セラピー」「認定セラピスト」等というような名称もありますが、多くはその団体独自の資格ですので、気になる方は問い合わせてみてはいかがでしょうか。

 

鍼灸治療を受けることができる場所は概ね下記の3種類で、必要な資格は以下の通りです。

1.「鍼灸治療院」→鍼灸のみで施術→「はり師」+「きゅう師」の国家資格が必要。

2.「鍼灸マッサージ(指圧)治療院」→鍼灸・マッサージで施術→「はり師」+「きゅう師」+「あん摩マッサージ指圧師」の国家資格が必要。

3.「鍼灸整骨院」柔道整復に関する施術が基本、症状によっては鍼灸で施術→「はり師」+「きゅう師」+(あん摩マッサージ指圧師←無くても良いのですが、この資格も一緒に取る方もいます)+「柔道整復師」の国家資格が必要。

当院は1に該当します。

1.「鍼灸治療院」と2.「鍼灸マッサージ(あん摩/指圧)治療院」は保険診療が可能ですが、保険による治療を受けるには医師の同意書が必要です。また、治療院によって保険が使えたり使えなかったりします。

3.「鍼灸整骨院」は原則保険診療が使えますが、対象となる症状は骨折・脱臼・打撲・捻挫・挫傷のみ。それ以外は自費となります。整骨の病名で診療を受けた場合、鍼灸治療を併用すると鍼灸治療は自費となるので注意が必要です。

治療スタイルは各治療院によって大幅に異なるため一概には言えませんが、1と2はどちらかというと東洋医学的な考えに基づいて施術を行うところが多いと思われます。

3はどちらかというと西洋医学的な考えに基づき、スポット的に鍼灸を用いることが多いようです。(私は柔道整復師の資格を持っていないので詳しくは分かりませんが、整骨院で働いていた時の印象です。)

今困っている症状以外も含め、長期戦で体質そのものを調整していきたい方には1か2がいいと思います。

※国家資格を取得しているからと言って、全ての国家資格保有者が治療に必要な知識・技術があるとは限りません。国家資格を持っていなくても、症状を改善させる力を持っている方がいることも事実です。但し、国家資格を取得するために3年間基礎的な医療全般を学んだ人とそうでない人の差はかなりあります。私自身、整体師として働いていた頃に知識・技術の無さを痛感したことが、国家資格を取得しようと思った理由の一つでした。実際に鍼灸専門学校では、決して独学では学びきれない質と量の知識をしっかりと学習することができたと感じています。現行の日本の制度ではこの辺りが非常に曖昧で、分かりづらくなっています。国家資格の有無を含めて、自分の体を安心して任せられる施術者かどうか、しっかりと確認した上で予約を検討されるのが良いかと思います。

 

その2に続く…

 

 

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5月の休診日

2021-04-20 09:00:00 | お知らせ
5月の休診日をHPで更新しました。
ご確認よろしくお願いいたします。
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認知症の方と接するときに大切にしたいこと

2021-04-15 14:47:00 | 日記

「認知症」という病気を多くの方がご存知だと思います。年々患者数は増加しており、いつ誰がなっても不思議ではないことから、認知症予防について関心は高まってきているようです。

しかし、認知症の患者さんに対してどう接すれば良いかを知っている人はまだまだ少ないと感じています。
代表的な認知症は4種類あります。
・アルツハイマー型認知症
・脳血管性認知症
・レビー小体型認知症
・前頭側頭型認知症
認知症状は病気の種類によって異なりますが、「記憶障害(もの忘れ)」「見当識障害(日付や自分のいる場所が分からなくなる)」「感情失禁(急に怒ったり泣いたり感情のコントロールができなくなる)」「幻視(実際にはないものが見える)」など様々です。
 
患者さんご自身にとって、これまでできていたことが少しずつできなくなる恐怖感や不安感はかなりのものだと思われます。患者さんと関わる家族や身近な人たちも、以前と様子が変わっていくことを受け入れられず辛い気持ちになります。
病気だから仕方がないと分かってはいても何度も同じことを繰り返し言われたり、良かれと思ってしてあげたことで急に怒られたりすると、ついイライラして声を荒げたり投げやりな態度を取ってしまったりすることがあると思います。
近しい存在ほど、そうした不和が生じやすくなります。
 
私自身、祖母が認知症と診断されるまでの1年ほどの間、祖母自身の状態の変化を身近で見ていた経験があります。当時は全く医療の知識がなかったこともあり、戸惑うことばかりでした。元々感情表現が豊かな人でしたが、だんだん笑わなくなって無表情でいることが増え、家事も身支度もどんどんできなくなっていきました。家族との衝突も日に日に多くなりみんなが限界を迎えた頃、認知症と診断されました。持病もあったため入院しましたが、祖父と同室になったことで少しずつ笑顔が出るようになりました。その後、グループホームに入居する頃には笑顔が出る機会が増えました。
もう20年ほど前の事なので、今よりも認知症に対する情報が少なく限界はあったと思いますが、今だったらもっと優しく丁寧に接することができたかなと思います。
 
今はインターネットでも認知症のことや対応策について簡単に調べられるので、何か困ったことが起きたタイミングで調べてみるのも良いと思います。何も起きていない時に調べてもなかなか実感が伴いませんが、実際にトラブルが起きた時だと腑に落ちやすくなります。
 
ただ、家族の場合は頭で分かっていてもつい感情的になりがちです。
そうした場合は、介護の専門家に相談するのが一番です。
認知症の診察は受けていないけれど、もしかして認知症かもしれない、という場合は、地域包括支援センターに相談することをおすすめします。
担当のケアマネジャーさんがいる場合は、そうした日常における悩みを打ち明けてみるのもいいと思います。
これは何に対しても言えることですが、まず正しい知識を持つことが最優先です。その上で冷静に状況を判断し、随時適切な対処を行うようにしていくことが大切です。
 
 
認知症の方はちょっと前に起こったことも忘れますが、その時に生じた感情は印象として残ります。
もし誰かがイライラして乱暴な言動を取ってしまったら、認知症の患者さんは自分がなぜ怒られたかは分からないけれど、怒られてしまった印象は残ってしまいます。そんなことが日々の暮らしの中で繰り返し起きてしまうと、自分は怒られてばかりいると辛く悲しい気持ちになって、いっそう感情が不安定になってしまいます。
だからこそ、楽しい!という感覚をたくさん体験してもらえるような工夫が大切なのかと思います。
当院にも認知症の患者さんが来院されていますが、毎回飾っている花や置き物を見て喜んでくださいます。素敵な笑顔につられて私も笑顔になります。
患者さんが治療院で過ごす時間は患者さんの中ではごく僅かの時間かもしれませんが、ここにきたら楽しい、と感じてもらえるような雰囲気づくりを意識しています。
 
認知症の患者さんにとっては、今この瞬間が全てです。その瞬間瞬間の積み重ねが素敵な時間であるように接することができたらと思っています。
 
 
私の祖母は今年で93歳になります。最後に会ったのは一年半前。会う度に祖母の大好きなお灸をすえていましたが、現在は入院しているため、帰省できたとしてもお灸をしてあげることはできません。自宅で生活していた頃は、毎日自分でお灸をすえているほどでしたから、今でもお灸のことは覚えているかもしれません。
まだまだ会うことは叶いませんが、祖母のことを思うと、お灸をした後の嬉しそうな笑顔が一番に思い出されます。またお灸をしてあげたい気持ちはやまやまですが、毎回悔いのないよう接することができていたのだな、と、会えなくなった今実感しています。
 
 
身近に認知症の患者さんがいる方の中には、日々複雑な思いを抱えられて過ごされている方もいるかもしれません。見守り続けるのはとても大変なことですが、時には専門家のアドバイスを取り入れながら、患者さんと一緒に今この瞬間を楽しんで過ごせる機会を作れるといいですね。
 
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呼吸で気持ちを切り替える

2021-04-11 19:28:28 | 養生

昨年の春はこれまで経験したことのない緊張感の中で、常に気を使って過ごしていました。

今年の春は、昨年よりも緊張して過ごさなければならないほどの状況であるものの、様々な非日常に慣れてしまい、私自身、適度な警戒心や緊張感が昨年よりも薄れているのに気づくことがあります。
こういう時こそ、正しい知識を持って適切に行動することが必要です。
 
しかし、緊張したり我慢したりが長続きし過ぎ、心身ともに限界を迎えてしまっている方が少なくないのではないでしょうか。
 
4月は新しい年度に切り替わることもあり、新しい環境への適応が求められます。
柔軟に対応することが問題なくできる人もいれば、それが難しい人もいます。
後者の場合、思うようにいかないことが続いて自信をなくしてしまうことがあるかもしれません。一度そうなってしまうと、周りの人達が何でもこなせているように思え、自分1人が何もできていないような感覚に陥ってしまうことがあると思います。
 
当然のことながら、一人一人生まれ育った環境が異なり、姿形はもちろん、性格や体質も様々です。
一人として同じ人はいません。だから人と自分を比べないことが大切です。
 
 
とはいえ、あれこれ考えたり悩んだりするのを意思の力で止めるのはかなり難しいもの。
そこでおすすめなのは呼吸法です。
下腹部から息をしっかりと吐き出して、吐ききったらそのまま自然に息を止めてみます。
集中したい時(例えば習字で筆を半紙につける時など)に息を止めたことがある経験は誰にでもあると思いますが、呼吸が止まると心の動きも止まります。
心を止めるのは大変ですが、呼吸を調整するのは割と簡単にできます。
 
マイナス思考に陥る瞬間は誰しもありますし、それ自体が悪いことではありません。それまでの自分の行動を振り返るきっかけになりますし、次にどうすれば良いのか気付けるきっかけにもなります。
ただマイナス思考がずるずると続いてしまうと苦しくなる一方なので、そこから抜け出す一歩として、呼吸法を取り入れてみるのも良いかと思います。
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心身一如

2021-04-04 09:32:34 | 鍼灸
心身一如」という言葉があります。
「身心一如」と書かれることもあります。
どちらの漢字が先にきたとしても、心と身体は分けることのできない一つもであり、一つのものの両面であるという考え方です。
仏教の考えですが、東洋思想の一つとして鍼灸治療においても重要視している考え方です。
 
 
心が疲れていると身体も疲れ、身体が疲れていると心も疲れます。
どちらか一方だけが元気、ということはありません。心と身体、どちらが先に疲れを感じ始めるかはその時々によりますが、一方の調子がおかしくなると、もう一方もつられていきます。
不調に気付いたら、休息やバランスの良い食事を摂ることで本調子に戻ります。
しかし、気付くのが遅れたり、気付いていても無理をしてしまったりすると、自分の力では元に戻れなくなることがあります。
 
 
そんな時に力になれるのが、鍼灸治療です。
 
鍼灸治療ではまず身体の方を調えます。みなさん「ツボ」という言葉をご存知と思いますが、この「ツボ」は身体が元気な時は現れません。不調の時に「ツボ」は出現し、元気になってくると「ツボ」は消えます。
私たち鍼灸師は、患者さんの身体に現れた「ツボ」を出来る限り正確に把握し、必要な刺激を与えるのが仕事です。
 
 鍼を用いる場合は、どの程度刺すか、あるいは刺さないか、等を適宜判断しながら施術します。
灸を用いる場合は、どの程度温めるか、もぐさの種類を含めて判断しながら施術します。
元気のない「ツボ」には気を補充して元気な状態になるように、逆に元気が過剰になったり滞っている「ツボ」からは取り去るようにします。
そうして「ツボ」の状態が調って現れていた反応が小さくなったら消えたりしたら、治療は終了です。
 
こうして身体は少しずつでも回復に向かっていく力を取り戻していきます。身体が安定するに従って、心の疲れも次第に回復に向かいます。
あとは、適切な食事と運動を習慣とすることで、さらに順調に回復することが可能となります。
 
どのくらい食べれば良いのか、どのくらい運動すれば良いのか、頭で考えても分かるものではありませんが、じっくり自分の心身に向き合っていると次第に分かるようになります。
その向き合う力も鍼灸治療によって着実についていきます。
もちろん休息をとることも大切。どのタイミングで休息を取れば良いかも次第に分かるようになっていきます。
 
ただし、鍼灸治療ができるのはここまで。
 
 実際に食事を摂るのも、運動をするのも、患者さんご自身にしかできないことです。
初めはうまくいかないこともありますし、うまくいく時といかない時の波があるかもしれません。
それでも諦めずに自分の心身に耳を傾けて、なんとなくこうかな?という感じで構わないので向き合い続けていると、その時々の最善の方法が分かるようになるはずです。
「今日は脂っこいものを食べない方がいいかも」「少し外を歩いた方がいいかな?」等、なんとなくでも気づいたことがあれば、まずそれをやってみてください。一気に全てを調整していくのは難しくても、一つずつなら案外簡単に実践できます。
小さなことの積み重ねで、心身ともに本来あるべきバランスの良い状態に持っていけるようになると思います。
 
 
コロナ禍になって一年以上となり、来院される患者さんの疲労も少しずつ蓄積されているように感じます。また、長引く閉塞感の影響が顕著になっている方もみられるようになりました。
この状況下で新しいことに挑戦するのはこれまで以上に勇気がいることだと思いますが、新たに当院に来られ始めた方もいます。
 
大きな不安や身体的苦痛を抱えた患者さんが増えたことで、これまで以上に私自身の心身を調え続けることが重要だと感じています。
常にベストを尽くせるように、適切な食事・運動・休息を心がけていきたいと思います。
 
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