現代人の80%以上が冷え性である、という説を提唱している学者 がいます。「全身が冷えている」と自覚している人はともかく、上半 身がのぼせる、手足がほてるという人は、「自分は暑がり」と思って おり、冷え性とは無縁だと固く信じている人が多いようです。だが 上半身がのぼせる人、手足のほてる人も、冷え性である。それは、 「上半身がのぼせる人」は、「下半身が冷えている人」だから。 漢方医学では、下半身に生命の根幹がある。ほてりも、体内の 熱が表面に逃げて起る、表面は熱く感じても、肝心の体芯は冷え ている。特に女性は、男性より筋肉の量が少ないし、水太り・脂肪 太りの人が多いことから、男性より体温が低く、冷え性の人が多い。 「女性らしさ」をもたらすエストロゲンなどの女性ホルモンは、体を冷 やす作用がある。現代人の体は冷えやすい状況にあり、それが さまざまな症状の原因になっている。その「冷え」症の現れ方は 6つのタイプに分類できるとのことです。
- 「全身冷え」タイプ
- 「下半身冷え」タイプ
- 「体表の血行不良」タイプ
- 「冷え・のぼせ」タイプ
- 「水分過多冷え」タイプ
- 「気冷え」タイプ
- 「全身冷え」タイプ 全身が冷えることは、全身の臓器代謝が落ちている。それ はすべての臓器は「熱」でその働きが営まれている。全身 が冷える人は体温も低く、湯冷めもしやすいく、「冷え」の 代表疾患の風邪にかかりやすくなる。消化器の働きも衰え ている、食欲不振、食後眠くなるなどの症状も表れる。全身 冷えの人は、赤血球の数が少ない(=貧血傾向)ケ-スが 多い。赤は「温める色」で、冷え性の人は赤、「赤血球」が 不足がち、これが貧血です。赤血球は、肺に吸い込まれた 酸素を全身に運ぶ。貧血になると動悸、息切れが起りやす くなる。また、冷え性の人は、「冷え」の色、色白の傾向が あり、白髪にもなりやすい。
- 「下半身冷え」タイプ 精力減退、糖尿病、腎臓病、高血圧などが多い。脳や心臓 などの高等臓器は上半身に存在する。食物を吸収して排泄 したり、成長して子孫を増やすよう生命を永らいていく一番大 切な基本的臓器(腸、腎臓,膀胱,生殖器など)は,ヘソより 下に存在する。老化は下半身から、といわれるように、生命 にとって重要なのは下半身。ここが冷えて血行が悪くなると、 臓器の働きが低下して老化もはやまる。セックスも弱くなり、 「生命」の存続そのものが危うくなる。腎臓・膀胱・睾丸・ペ ニス・子宮・卵巣など、泌尿・生殖器も含めた「生命力」その ものが落ちた状態を、漢方では「腎虚(じんきょ)」というそう です。
- 「体表の血行不良」タイプ 全身のあらゆる臓器は、血液が運ぶタンパク・脂肪・糖分・ ビタミン・ミネラルなどの栄養素や、水分、酸素によって生き ており、それぞれの働きを遂行している。皮膚も、つまり体表 血行が悪いこのタイプの人には、乾燥肌、肌荒れ、ささくれ、 目のクマ、抜け毛、爪の割れなどが生じやすい。
- 「冷え・のぼせ」タイプ 顔のてかり(のぼせ)、しゃっくり、イライラは、下から突き上げ てくる症状゛。口内炎も便秘も同様。胃腸が本来の働きどおり 下に向かって動けば、便秘にもならず、口内炎もできない。 ヘソより下の下半身が冷えると、大腸の働き(大便を押し出す 力)が低下し、熱や「気」が上に向かい、便秘や口内炎になる と考えられる。漢方医学では、これを「昇症」という。イライラか らくる不眠、肩こり、鼻血、生理不順(生理も月経血を下に降 ろす現象)も昇症の一種で、「冷え・のぼせ」タイプに多い症状。
- 「水分過多冷え」タイプ 体が冷えると水分の代謝が悪くなり、体内に水分がたまる。 冷えると発汗が少なくなり、尿を作って排泄する働きのある腎 機能も落ち,呼気や皮膚から出ていく水分(不感蒸泄)も少な くなり、体内のくぼみや膨らみ(胃腸,副鼻空、肺胞、皮下な ど)に水分がたまる。このタイプは、水分を排泄しょうとする反 応や、「冷え」と水分過多がまねく痛みや代謝低下をきたしや すく、下痢、動悸、頻脈、ぜん息、アトピ-性皮膚炎などにな りやすいと言われています。
- 「気冷え」タイプ 11月から3月の間は、「うつ病」を病む人が多くなる時期です。 これは「季節うつ病」といわれ、この病気の人は暑い夏の盛り の8月には、心身ともに調子がよくなる。「うつ病」は、「心の風 邪」といわれているように、「冷え」の病気のようです。 気の病、 つまり倦怠感、食欲不振、不眠症、自律神経失調症などの精 神疾患は、寒い地方の人々のほうが、温暖な地域の人々より かかりやすいとのことです。「冷え」が精神疾患の大きな原因と 考えていいようです。 参考文献:石原結寛著「どんな病気も温めれば治る!」 もっと詳しく<冷え性対処療法>