目標 分化育て後世に伝える
空知管内栗山町ハサンベツには、里山づくりの ためのボランティアが毎月第ニ日曜日に集まる。 9月9日は地元だけでなく岩見沢、長沼など周辺 市町からも合わせて三十二人が参加した。七十 代の高齢者の姿もあった。この日の作業は、そば 刈と湿原の復元に向けた湿性植物の苗作り。特 に苗作りは手間のかかる地味な作業だ。前年に 採取したヒオウギアヤメやノハナショウブなどの 種をより分け、用意した四百鉢のポットに黒土を 入れて種を埋める。キツネに狙われるため、最後 は網をかぶせる。活動は根気強く続いている。道 立林業試験場が参加者にアンケ-トしたところ、「目的がはっきりして いる」「子どもたちに里山の自然を守り、里山の資源を利用する文化を 伝えたい」という答えが多数返ってきた。
川づくりに力
「川の環境が良くならないと豊かな里山は生まれない」里山計画実行 委員会の高橋慎事務局長(57)は、活動の中でも川づくりが肝心だと 見ていた。川に微生物や水生昆虫、魚が戻ればそれを求めて鳥も増 える。ホタルの餌のカワニナが水中に増えると、好物の落ち葉が分解 され、海に流れてプランクトンの餌になる。里山づくりによって海、川、 森、土のつながりができる。町と協議して、まずハサンベツ川に設けら れていた高さ1、2メ-トルのせき(落差工)を改修し、魚道をつくった。 札幌で環境コンサルタント会社を経営する妹尾優二さん(56)が関心を 持ち、設計と技術指導を無報酬で買って出た。皆で本流から小川を引 き、石を組んでふちや瀬もこしらえた。完成後、ウグイの群れやイバラト ミヨ、スジエビが確認された。2005年と06年には道州制モデル事業の 関連調査費で、流れが直線的で速かった箇所を蛇行させ、両岸を小動 物や植物が育ちやすいようにこう配の緩やかな土の斜面にした。
成果は着実に
貴重な動物も見つかった。環境省のレッドデ-タブック(RDB)絶滅 危惧Ⅱ類のニホンザリガニが源流で確認され、繁殖しやすいように 倒木と玉石を組んで小さなせせらぎをつくった。北海道のRDB留意 種のエゾサンショウウオも別の場所で卵が見つかり、産卵池を設け た。実行委の中井惺会長(69)は「ここの活動の特徴は会と町が役 割分担をしていること」と話す。町は河川法や都市計画法など法的 問題の整理と住民間の調整を担当し、活動の主体は委員会が担う。 本州では農家が燃料用にまきを切り出したり落ち葉を利用して堆肥 を作るなど里山との長い歴史があるが、北海道では道南の一部を除 いて歴史が浅く、なじみは薄い。心ない人たちによって、せっかく育て たり見つけた希少動植物が狙われる心配もつきまとう。しかし、栗山 には明確な目標がある。里山の文化を育て、後世に伝えることだ。ハ サンベツには今年も野外学習で大勢の子供たちが訪れた。20年の計 画は折り返しにも達していないが「成果は着実に生まれている」と会 員は実感している。
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