自然との共生 舞う国蝶 町民動かす 実習用の水田の稲刈りに励む生徒たちのそば でノシメトンボやアキアカネが飛び交う。近くの 小川では、別の生徒たちが水生生物調査のた め、玉網でミズカマキリやエゾウグイなどをすく い上げる。歓声が秋の深まる山里にこだました。 10月4日、空知管内栗山町ハサンベツで行われた 同町継立中学校 (生徒数50人)の体験学習だ。ハサンベツは、 栗山の市街地から約2㌔離れた夕張川支流の ハサンベツ川沿いにある離農跡地。この地を, 動植物の生態系豊かな土地にする試み「ハサン ベツ里山づくり20年計画」が始まって7年目を 迎えた。同地区は、10年前までは農家が自家 用の作物をつくる以外、ヨシなどが生い茂る荒 地だった。山に囲まれ、規模拡大に適さない中 山間地。入植した十八世帯は限界を知って次々 と離農した。
「ごみ捨て場」 「はっきりいってごみ捨て場になっていた」。この地に住む山岸三太 郎さん(78)は振り返る。夜に冷蔵庫や布団をこっそり捨てていく。 それが呼び水になって次々と粗大ごみが置いていかれた。ハサン ベツを里山にと、町民挙げての運動が始まるきっかけは、国蝶「オオ ムラサキ」の発見だった。1985年、隣接する御大師山で、小学校 事務員で現在里山づくり実行委員会事務局長を務める高橋慎さん (57)が確認した。羽が開いた時の長さが七㌢に達し、青紫に光る 国蝶は、道内ではごく限られた地域にしか生息しない。幼虫はエゾ エノキの葉を食べ、成虫が好むのは樹液の出るナラ、ニレ、クリなど 広葉樹。樹種の豊富な雑木林でなければ生きていけない。「オオム ラサキが飛翔する姿に栗山の子どもの姿を重ねたい」「自然の遺産 を後世に伝えたい」まず地元の若手経営者らが立ち上がった。町も 好応してハサンベツの活用方法を検討した。幸い野鳥観察グル-プ など町内には自然愛好者団体が七つもあり、植生に詳しい人材に恵 まれた。
お手本は童謡
離農地24へクタルは、環境省の補助を受けて町が99年に五千万 円余りで購入。使い道は自然愛好者団体に委ねた。そのまま放置 するのでは多様な生物は育たない。人手を加えながら自然との共生 を図る方法を選び、翌々年に里山づくり実行委員会が設立された。 計画は童謡を下地にした。例えば「春の小川はサラサラ」プロジェクト (PT)では、子どもたちの遊べる小川づくりとドジョウやトゲウオの生 息地づくりを、「ミズバショウの花が咲いてる」PTでは、湿地性植物 の繁殖地づくりを目指した。当時、椿原紀昭町長は「土地は買うが、 口は出さない」と約束した。参加者は手弁当で作業に励んだ。エゾ エノキの植樹や小川の掘削、わずかばかりの田畑や果樹園づくり。 そこに思わぬ朗報が舞込んだ。ハサンベツにつながる五十ヘクタル もの山地の寄贈。活動を見守ってきた八十六歳の女性からだった。
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