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企業が変える農<上>

2009-07-21 16:03:33 | 社会・経済

流通競争 農場直営JAに危機感

100_7212 東京都心から東へ60㌔。千葉県富里市のなだらかな広陵に広がる4・5㌶の畑が「野菜は市場や農家から仕入れるもの」というス-パ-の常識を変えるかもしれない。「セブンファ-ム富里」。大手ス-パ-、イト-ヨ-カ堂(東京)が野菜を自ら生産する目的で昨年8月に設立した農業生産法人だ。今年は県内9店鋪にトウモロコシ、ブロッコリ-など320㌧の出荷を見込む。「小売りと農業生産が連動するメリットは大きい」。同ファ-ム開発担当の久留原昌彦さんが手応えを語る。ス-パ-が直接手がける農場なので、仕入れの際の市場手数料は不要。店から出た食品廃棄物を堆肥にして使い、通常なら規格外の野菜も店と連携して格安価格で売りさばくため、無駄がない。コストが安く、環境にも優しい「循環型農業」の理想へ踏み出した。同社は将来、道内などでも農場開設を検討、自社生産の野菜の扱いを増やす考えだ。

法改正が後押し

担い手不足が深刻化し、耕作放棄が埼玉県の面積とほぼ同じ約39万㌶にも達する日本の農業。一方でイト-ヨ-カ堂のように、企業の資本力とノウハウを投入し、農業ビジネスの可能性を切り開く事例も増えてきた。年内にも予定される改正農地法の施行は、このような企業の動きを後押しし、農業を再生に導くことに狙いがある。昨年の中国製ギョ-ザ中毒事件や輸入穀物高騰で、食糧自給の重要性が再確認された時期の法改正だけに、流通・外食企業の参入はさらに加速しそうだ。檜山管内せたな町などに農場を持つ居酒屋チェ-ンのワタミ(東京)は、国内の自社農場を2013年までに現在の1・3倍の600㌶に広げる計画。生協ひろしま(広島県廿日市市)は10年度に農業生産法人を設立、住友商事(東京)も農業参入を検討し始めた。

付加価値を模索

こうした企業側の動きにJA(農協)グル-プの危機感は強い。セブンファ-ム富里のケ-スでは、地元JAも出資し、応分の配当を得る形になってはいる。ただ、企業参入が加速すれば、競争力のない既存農家の作物をJAが集荷して企業へ-という農産物流通の仕組みも形骸化し、JAの存在意義まで失いかねない。全国農業共同組合中央会(JA全中)は組合員間の農地賃借の仲介業務を強化し、企業への農地流出を食い止める一方、「組合員の農産物の付加価値を高める流通体系の確立が必要」としてグル-プの加工、レストラン事業を拡充し、新時代に備えようとしている。JAの危機意識が企業参入の妨げではなく、企業との健全な「流通競争」につながれば、日本の農業の足腰もより強くなるはずだ。

    ◇

改正農地法と同関係法が6月に成立し、企業による農業参入の門戸が大きく広がることになった。農業にビジネスチャンスを求める企業の戦略とともに、農業外からの参入を機に変わりゆく農業の姿をリポ-トする。

メモ企業の参入条件  企業やNPO法人が農業参入する方法は主に①農業生産法人を設立②市町村が区域指定した農地を賃借して直接参入-の2種類あり、道内でしているは①で129社、②で12社が参入している(昨年9月現在)。改正農地法などは①について、企業の農業生産法人への出資制限を現行「10%以下」から「25%以下」に緩和。②についても、条件の悪い農地が割り当てられやすい区域指定を廃し、賃借期間も現行「最長20年」から「同50年」に延長した。

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