-がん検診も批判していますが、実際に早期発見・治療で治った人もいるのでは。
検診で「要精密検査」と言われても多くはがんではない。必要のない精密検査や治療を受け、体調が悪くなることもある。がんとそうでないものの間には無数の段階があり、腫瘍によっては大きくならないものもある。がん検診で命が救われたという人がいたとしても、統計的には検査を受けても受けなくても寿命はかわらない。旧チェコスロバキアの研究者が20年ほど前に年2回、肺がん検診を3年受けるグル-プと、全く受けないグル-プをつくった。3年の研究期間終了後、さらに3年間、経過をみると、肺がんで死亡した人数も総死亡人数も、検診を受けている方が多いという驚くべき結果が出た。専門家の間で激論が起こったが、エックス線(放射線)が影響している可能性もある。日本人のエックス線検査は世界で断トツ。専門家は「病気の早期は早期発見という利益の方が、放射線による不利益を上回る」とデ-タを基に主張するが、そもそも国民全員が受けられる、がん検診を行っているく荷は少ない。
-メタポ健診も疑問だと。基準に問題があるのか。
基準は関係ない。そもそもこうした健診が必要なのか、だ。メタポ健診が始まる前、現場の医師から「なぜ新たな病気をつくるのか?」と疑問の声が出た。メタポリック症候群では肥満によって血中の中性脂肪が増え、血糖値も高くなり、大量のインスリンは枯渇し、糖尿病や高血圧のリスクがさらに高まるとされている。しかし、私が行っている2千人の日本人を対象とした大規模調査では肥満があり、かつインスリンが増えている人は数人。日本であらためてやる必要のある健診ではない。
-では医療には何を求めればいいのか。
現代医療を否定はしない。自分も病気になれば薬を飲む。大切なのは予防で、血液検査は受けるべきだ。バランスのとれた食事と習慣的な運動は何より重要で、そうしない人と比べ20%以上寿命が違うデ-タがある。スウェ-デンのような予防を中心にした地域診療所の制度を確立すべきで、症状を電話でなどでも相談できるようにすれば、必ずしも病院へ行かずに済む。日本人の病院に行く割合は世界トップ。むやみに病院に行けば過剰な医療で健康を害するリスクも高まる。家庭医や周辺スタッフを増やすことで、過剰医療を抑制でき、医療費は大幅に抑えられるだろう。医師不足が言われているが、医師を増やすと無駄な医療行為が増える可能性もある。
天文学者のガリレオ・ガリレイが「地球が回っている」と地動説を唱えた時、当時の人々は異端のレッテルを張った。だが今、この説を疑う人はいない。おうおうにして、人はその時々の常識から独断的な判断を下し、そこから離れられない。
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