紅の豚 価格:¥ 4,935(税込) 発売日:2002-03-29 |
「紅の豚」(宮崎駿監督、1992年、日)第一次世界大戦後の イタリア・アドリア海を舞台に、空賊相手の賞金稼ぎとして飛行 艇を駆る中年男ポルコ・ロッソの活躍を描く。友を亡くし、戦争 の英雄となることを嫌った彼は、魔法により豚となっていた・・・。
人に小難しい質問をふっかけるのが趣味の、やっかいな飲み仲間が いる。あるときは、「あなたは誰(何者)なのか答えよ」と言う。チッ、 面倒なヤツだと思いつつ、この設問の持つ深さにき引きつけられた。 「あなたは誰?」と聞かれれば、たいていは氏名と職業を答えるだろ う。しかし氏名は識別記号、職業は現在の所属先でしかない。変化し 得るものであり、必ずしもその人の本質を表すものではないのだ。名 も職業も関係なく、自らを定義するには、「何かできる者か」「どう考え る者か」「どう行動する者か」を証明すべきことになる。
「飛ばねえ豚は、ただの豚だ」とポルコは言う。危険な生活を辞めて、 平穏な生活を求めることもできる。が、そうしない。このセリフは、「自 分はそう生きる者である」という宣言であり、「そうとしか生きられな いのだ」と苦笑しながら自らに言い聞かせる前向きな自嘲でもある。 そしてまた、「朝鮮を忘れたら終わりだぜ」という、同世代へのエ-ル でもあるのだ。○○しなければ、ただのオヤジだ。○○でなければ、 ただの負け犬だ。○○でないなら、単なるガキだ。などなど、応用編 はいくらでも作れる。そこに言霊か゛こもるかどうかは、口にする人間 の「そう在りたくはない(から頑張る)」という意志あればこそ。近々、 団塊の世代がいっせいに定年退職を迎える。役職や会社名が身か らはがれたとき、世間で、家庭で、自分は何者で在り得るのか・・・と 不安な人も多いのではなかろうか。でも大丈夫。その疑問からこそ、 変化に挑む意思が生まれるのだから。あなたは何者か。その間に。 一生飛ぶことを続ける者である、と答えられたらステキだろう。 (重田サキネ=ライタ-)
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