大台ヶ原には一度は行ってみたいと思っていた。
しかし、滋賀からは遠いし、周遊コースを歩いた時の運動量がわからない。
伊吹山のお花畑や赤目四十八滝などのハイキング・レベルであれば問題ないのだが。
今年は、関西で最も早く紅葉を見ることができるスポットとしてテレビ各局が取り上げていた。
何回かそういった紹介番組を見ているうちに、ついに今年こそ行ってみようと決めた。
テレビでは紅葉の見ごろは今週末までと言っていて、その時点での週末である10月25日(日)、期待を胸に大台ケ原へ出発した。
テレビで、駐車場は午前6時で満車になると言っていたので、真夜中に出発。
国道169号線から大台ケ原ドライブウェイに入ると狭くてカーブが連続する道になる。
真っ暗で、おまけに濃い霧で前がよく見えないなかを進む。
ようやく駐車場に辿り着くと、テレビで言っていた通り、既にかなりの車が停まっていたが、なんとか駐車場所は確保できた。
ほかの車も多分なかで眠っていると思われるが、僕もシュラフにもぐりこんで仮眠する。
冬のような寒さで、時折車が揺れるほどの強い風が吹いている。
それでもシュラフに入っていれば寒さを感じることはなく、さすがスグレモノのシュラフだけのことはある。
目が覚めると、もう夜が明けていた。
外に出ると、相変わらず強い風が吹いており、素晴らしい晴天ではあるが、寒い!
セーターにダウンジャケットは正解だった。
大台ケ原には東大台と西大台の二つのコースがある。
西大台は登山者向けのコースで、地区に入るには事前に申請手続きが必要とされている。
東大台は一般者向けで、申請手続きは不要であり、もちろんこちらのコースを選んだ。
大台ケ原というと、山奥のさらに山奥というイメージがあったので、熊野灘の海が眼下に見えたのには驚いた。
大台ケ原の最高峰日出ヶ岳(1694m)を経て、枯れ木が林立する正木峠、正木ヶ原へと進む。
突然現れた神武天皇像。大自然のなかに、こんな像を建てる必要があるのだろうか。
神武天皇像をあとにして、東大台きっての絶景と言われる大蛇グラに向かいながら、ふと考えた。
そういえば、まだ見ごろであったはずの紅葉を見ていない!
枯れ木でない、生きた木もすっかり落葉して枝だけになっている!
テレビに騙された!!!
楽しみにしていた紅葉が全然ないではないか!
落ち葉も既に茶色になっており、落ちたばかりの状態ではない。
どこが見ごろなんじゃあー!!!
さて、いよいよ大蛇グラ。
800mの断崖絶壁の上にあり、ただでさえ強く吹いている風が、遮るものもないここではさらに強烈に吹いている。
風がなければ岩の上を歩いて先端まで行けるのだろうが、強烈な風のなかでは岩や鎖につかまって体の安定を図りながらでないと先端に進めない。
岩の先端まで行って見える光景がこれ。
空中にそそり立つように突き立った巨岩。
強烈な風に吹き付けられて体もカメラも小刻みに動いて静止ができないなかで、なんとか写真を撮る。
たしかに絶景ではあるが、誰が撮っても記念写真的な写真しか撮れないような絶景ではある。
あとでインターネットの写真を見ると、ここも赤や黄色の紅葉で彩られているはずだったのだ。
大蛇グラの次は、シオカラ谷というところを経由して駐車場に戻るのが一般的なコースとなっているが、このシオカラ谷から駐車場までが急激な登りとなっていて、東大台で一番シンドイらしい。
ちょうどシオカラ谷からやってきた人がいたので聞いてみると、
「シオカラ谷の吊り橋付近の紅葉も終わりかけている。あの登りはけっこうシンドイですよ」
との答えだったので、迷うことなく別コース、中道と呼ばれるコースで戻ることにした。
枝にしがみつくように残っていた紅葉を見つけて、一応写真を撮る。
赤い落ち葉を見つけて、一応写真を撮る。
やっと紅葉らしいのを見つけて、一応写真を撮る。
行かなかったシオカラ谷を別にすれば、ハイキング・コースとしては上り下りの緩い、軽いレベルのコースだった。
大台ケ原としてイメージしていた雰囲気はなく、思ったよりは普通の山だった。
これだったら上高地などの方がずっといい。
多分、西大台の方に本来の大台ケ原らしい光景があるのかもしれない。
西大台に行くとなれば、雪が積もった出勤の時にしか出番のない登山靴がやっと本来の出番をすることになるが、もはや体力に自信がない。
ということで、これが最初で最後かなあ。