山間で育った少女アスナ(声:金元寿子)は、母と2人暮らし。
ある日、父の形見の鉱石ラジオから聴こえてきた不思議な唄を耳にしたアスナは、
その曲が忘れられなくなる。
そんな時、彼女は“アガルタ”と呼ばれる地下世界から来た少年シュン(声:入野自由)に出会う。
心を通わせる2人。シュンはこの世界の素晴らしさを知るが、アスナの前から突然姿を消してしまう。
もう一度シュンに会いたいと願うアスナ。
その目の前に、シュンと瓜二つの少年シン(声:入野自由・二役)が現れる。
そして、もう1人。若い頃に亡くなった妻との再会を切望し、
アガルタを探すアスナの学校の教師モリサキ(声:井上和彦)も2人の前に姿を見せる。
彼らの前に開かれるアガルタへの扉。3人はそれぞれの想いを胸に、伝説の地へ旅に出る……。
(goo映画より)
聞こえてきたのは「あれは、ないだろ。」とか「劣化ジブリ~」とか…。
色々言われてますが、なるべく聞かないように、何も読まないようにして観てきました。
新海作品は『ほしのこえ』、『雲のむこう、約束の場所』、『秒速5センチメートル』と観ていますが、
たぶん自分は新海ファンではないのです。
確かに『ほしのこえ』を見た時は、スゲェー!!と思いました。
でもそれは作品の内容に感嘆したのではなく、これをたった一人で作ったという部分にです。
自主制作アニメが特別珍しかったわけではありませんが、
まだまだクオリティが低く、ストーリーに重量感のある作品がなかった時代に
ここまでのモノを一人でかぁと感動したのです。
続く『雲のむこう、約束の場所』は約90分の劇場版で『ほしのこえ』進化系だなと。
セカイ系はそのままに、パラレル・ワールドを下地に思春期の透明感のある恋を絡め、
ストーリーの流れも違和感が少なくなって、見やすくなってきたじゃないかと思ったと記憶してます。
そして『秒速5センチメートル』。これは評価高いですよね。
主人公の少年を軸にした3話のオムニバス作品。
切ないラブストーリーとか抒情性豊かとか…でも自分は好きじゃなかった
あ゛~いつまでもウジウジとウザい!!が感想w
1話目の「桜花抄」は良かったんです。この年頃を描くのが上手いなぁと。
心情を細かい動作や小物で描写できていて、シロウト臭さが抜けてきたじゃないかと。
でも3話目まできてセカイ系が鼻に付いてしまって、追い打ちをかけるように
山崎まさよしの歌が体中をリフレイン 映画館を出る時にはゲッソリしてましたw
で、今回の『星を追う子ども』。今までの作品とは違う気がして
それなりに楽しみにしてたんですが、前記の評判が耳に入ってきて
劇場に行くのはよそうかと思いましたが、十分楽しめるという声もあったので、
観て来なきゃ話にならんよな、です。
はい、多くの方が言うようにこれを観てジブリを思い浮かべない人はいないしょう
というくらい、ジブリ臭プンプンでした。
監督本人も確信犯でしょうし、少年少女ジュブナイル作品ともなれば、
画的には、これはこれでいいんじゃないのかな。
ただ“劣化ジブリ”と言われる所以も観るとよく分かります。
宮崎駿作品の作画はハンパないですから、マネでどうにかできるレベルじゃないと思うので、
サンドイッチを頬張るシーンとかは、わざわざやらない方が良かったかもです。
でもモリサキ先生が妻のリサの魂をアスナの体に宿すシーンはなかなか秀逸だったと思います。
液体状のモノが体を覆い変身しますが、元に戻るとき再び体が覆われ
その後、張力が無くなったようにバシャンと一気に剥がれ落ちる。
あれは、おおっ!と思いました。
主人公がカワイクない!の声もありましたが、
キャラデザの悪さは『ほしのこえ』からずっとだと思ってますw
新海作品が描くあの独特な星空は健在でした。
セカイ系から脱却して、誰が見ても分かりやすく感動できる作品にしたかったように感じる
本作品ですが、残念ながら感動には至らず、ストーリーが弱いように感じました。
これなら『秒速5センチメートル』の方が、死ぬほどウぜぇと思わせた分
しっかり伝わってたような…。
モリサキ先生がアガルタを目指すのにブレはないですが、
アスナが行くのはたぶんシュンに惹かれているためで、本人が亡くなってるからこそ
シンを追うことでしかシュンとの繋がりが保てないとの思いが冒険の一歩だったと思います。
その後はシンはシンであり、シュンではない。
死を認め、命あるものを、今を大切にしなければならないということだと思うんですが、
無理にジュブナイルにせずモリサキ先生を主人公に
お得意の“自分の手の届かないところに行ってしまった妻(恋人)を想い続け、
とことん追い求める男の話”にした方が
言いたいことが伝わったんではと思ってしまいましたw
どこまでも亡くなった奥さんにすがり、目を潰してでも取り戻そうとするモリサキ先生。
アスナのママは夫の死を受け入れ、しっかり前を向いて生きているようです。
アスナも然り。シュンとシンの想い出は大切なものとし、前に踏み出します。
『秒速5センチメートル』同様、女はスパッと前を向くのさ。