空耳 soramimi

あの日どんな日 日記風時間旅行で misako

「カラスの親指」 道尾秀介 講談社文庫

2014-05-23 | 読書



日本人の名前は覚えやすい、さらさらっと読めた。図書館に予約すると、海外のものはすぐに順番が来るが、日本のミステリーは申し込みが多くて、最近のものはずいぶん待たなくては読めない。
これは積んであった読了本の中から発掘した。紛れ込んで忘れていたらしい。

竹沢(タケさん)・・・営業マンだったが妻をガンで亡くし、しばらくして娘も火事で亡くす。賭博で借金を作った友人の保証人になり、友人が逃亡した後その借金を背負い込んでしまう。ヤクザの追い込みを逃れるためにヤクザと組み自分も取り立て屋になる。貧しい母子家庭から根こそぎ取り立てたあと母親が自殺する。

テツさん・・・・・・ 鍵職人。はじめた商売がうまくいかず、妻は不倫の末家出。舞いもどった時には薬中毒になり、莫大な借金をしょっていた。テツさんは家出。以来かかわりの無い生活をしていた。鍵を使った詐欺師になってその仕事中にタケさんに見つかり、訳を話すうちに話がまとまり同居。英語とアナグラムに凝っている。

まひろ・・・・・・・・スリに失敗したところを助けられて、同居。

やひろ・・・・・・・・まひろの姉、無職で住むところが無く妹とともに同居。

貫太郎・・・・・・・・やひろの彼氏、マジシャンだったが無職になり姉妹とともに同居。

トサカ・・・・・・・・迷い猫。拾われて同居。


5人と一匹が擬似家族のように暮らしだす。

共通の恨みつらみを晴らそうとヤクザにコンゲームを仕掛ける。
携帯や車を使った手口と、お膳立てが本当に面白い。

5百ページを越える長さだが、登場人物の境遇やひととなり、過去の暮らしぶり(タケ+テツの詐欺、あの手この手)など、同居にいたる過程もわかる。
それにクイズやマジックやアナグラムが絡み、最後の智恵を出し合った報復ゲームは成功するのかスリルがある。

意外にも5人には何かの繋がりがある。同居しているうちにいつの間にか家族のようになっていき、過去の傷が癒えていくというところが暖かい。

題名は

玄人=くろ=カラス
親指(お父さん指)はほかの4本の指が全部見える。

ミステリかな、そうだとしたら作者が見せてくれるあちこちにある仕掛けに気づかないうちに、とうとう終盤の大仕掛けになる、ここは読みどころ。
終わり方もいい

「いいですよそんなもん縮んだって。どうせ女房が死んだとき、じぶんだってもう半分死んじまったようなもんなんですから」
「そういうこと言うなって」
「言いますよ。だってほんとうなんですから。あいつらは、女房を殺しただけじゃないんです、自分のことも殺したんですよ。人を殺すってことはそういうことです。たとえ包丁で刺したり拳銃で撃ったりしなくても、同じことですよ。誰かを殺したり自殺に追い込んだりしたら、そのそばにいる別の誰かのことも、必ず殺すことになるんです。人間は一人じゃないんですからね。一人だけを殺すことなんてできませんよ」
「テツさん━━」
コメント
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