これでヴァランダー刑事との付き合いは4作目になる。題名を見て、ITに疎い所はどうするのかと思った。同僚の刑事達が何とかするのだろう。まぁ読んでみよう。
そして見事に外れた。
ヴァランダーは理解できない世界に迷い込んでしまう。
こんなことが起きるなんて、分からない。どうなっているのだ。
それぞれにどんな繋がりがあるのだ。ITの宇宙とはなんだ。
少女が変電所の高圧線の上に放り投げられて焼死した残虐な事件、少女たちはタクシー運転手を惨殺していた。
その後ATMの前で男が突然死した。ITのプロらしいこの男は二箇所に仕事場を持っていたが、手がかりは残されたパソコンだけだった。
突然死で彼はデータを隠す暇が無かったらしい(唯一の手ががり)でもヴァランダーはパソコンは苦手でスタートさせることもできない。
運転手殺しの首犯は焼け死に、残った相棒の少女は関係ないとばかりに全く協力的でない。
同僚の多少できるマーティンソンがパソコンを開けて見るが全く歯が立たない。そこでペンタゴンのシステムに入った前科のあるハッカーの少年を呼んでくる。
彼はシステムを解読しながら進んでいくが、強力な厚いファイアーウォールの前で、現れては消えるプログラムを呆然と眺めるだけだった。
ただ20という言葉が頻発するという。彼は自己のプライドをかけて不眠不休でキーボードと格闘する。
20とは確かな情報なのか、何か意味があるのか。モニターの前でヴァランダーの思考は前に進まない。
一方、ウガンダでは、世界規模の破壊工作が進んでいた、彼はITのエキスパートだった。彼のプログラムを実行するだけで世界経済を破壊するシステムを構築していた。
彼の趣旨に賛同して集まった数名の中で、リーダーになっていった。
一方何も分からないと頭を抱えるヴァランダーも、地道に頭と脚で捜査する以外に無いと思いながら、少女たちや突然死した男の背後を調べだす。
しかし、繋がりのわから無い事件はやはりあのパソコンでなくては解けないのか。
そして、少女ガ以前交際していたという少年が行方不明になり、フェリーのスクリューに巻き込まれて死んだ。
ちらちらと見え隠れする東洋人、ヴァランダーは二度狙撃されて命拾いをする。
ハッカー少年も狙われる。
ヴァランダーが優れているのは、その鋭い観察力と総合判断の正確さと些細な出来事の細部のねじれや不具合を感じ取る能力だが、理解不能なIT社会の中では機能することができない。疎外感と無力感にさいなまれる。
読んでいても、なぜこんなテーマで困らせるのか、作者の意図が、現代社会に対する警鐘だとしても、物語の主人公が彼では解決は遠回りでじれったいではないか。
いつファイアーウォールにひびが入るのか、警察のエキスパートでも歯がたたないところでハッカー少年の執念は実るのか。
その間、ヴァランダーの捜査が続くが、これが隔靴掻痒というのか、もうじりじりした。
頼りはひらめきなのかと思っていたところに、20日のITテロの実行を前に、東洋人がヴァランダーに殺され、ATMの前で死んでいた男(ファルク)が経済コンサルタントであったことが分かり、ついにハッカー少年が壁の裏から入り込みそうになっている。
業を煮やした犯人はついに姿を現す。
というような話だったが。20日が近づくにつれて緊張感が増すはずが、乗り切れなかった。
少女の事件も特に重要な手がかりにならずくたびれもうけのようだし、無残にフェリーで死んだ少年もただ捜査を賑わしただけのようだった。多少関係は有るが。
ああ、これはまずいのじゃないか。ヴァランダーとパソコンではいけないなぁという感想で、上下巻を読み通したのは、今まで面白い話を読ませてくれたマンケルさんと、婚活に踏み切ったがうまく行かなくて、捜査では同僚と齟齬が生じ、あらぬ誤解で世間から非難される、横顔がステキなヴァランダー刑事にエールを送るつもりだけでがんばって(?)読み切ったのだった。
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