Cape Fear、in JAPAN

ひとの襟首つかんで「読め!」という、映画偏愛家のサイト。

『Cape Fear』…恐怖の岬、の意。

イケてる最期 ~Tくんの死~

2015-02-11 05:43:19 | コラム
「いいよなー、羨ましいよな」

と、隣りで煙草を吸うクラスメイトはいった。

「なにが?」
「べつに格好よくもないのにさ、あんな風に可愛い子と二人乗りで登校してきて」
「モノがちがうんだよ、たぶん」
「チンコがでかいってこと?」
「(笑う)そうはいってないけど。内面かもしれんし」

…………………………………………

専門学校時代の話である。

校舎のベランダで煙草を吸う、イケてない映画小僧3人。

家に居てもやることがないので、かなり早めに登校し、ベランダで煙草を吸いながら、ほかの生徒たちの登校風景を眺めるのが日課になっていた。

たしかにTくんは格好よくはない。
甘く採点しても、中の上といったところか。

しかし一緒に登校してくる彼女Iちゃんは上の上、つまり極上だった。

なんで? とは思ったが、自分はべつの子を好いていたから、羨ましいとまでは思わなかった。


(しつこいようだが)Tくんは格好よくはなかった。
しかし、いまのことばでいえば完全にイケていた。

つまり、よくある構図である。
イケてる男子を、同性が妬んでいると。


ところで。
イケてる男子のダサい瞬間を見て「ざまあ!」と思うイケてない男子も居るようだが、自分はその逆だ。

イケてる男子には、常にイケてる感じていてほしい。

コケたときでさえ、イケてる感じで。
嘔吐したときも。
射精したときの顔も。

中年になってハゲたり太ったりしては、もちろんいけない。

ある意味では憧れているのだから、いついかなるときでも気を抜かないでほしいんだ。

だから自分は中学の同窓会が開かれたとき、スポーツ万能でモテモテだったはずの石川くんが「ちょっとダサい感じ」になっていたことに愕然とし、本人にマジで説教をした。

「なにやってんの石川くん、こんなところで酒を呑んでいる場合じゃない。運動して、そのビールっ腹をなんとかしてよ!」

周囲も石川くんも笑ったが、いやいや、こっちはジョークなんかじゃなかったんだ。


さらにいえば。
イケてる男子は、死ぬときもイケてなきゃいけない。

『太陽にほえろ!』の、松田優作のように。

…………………………………………

きのう、Tくんの死を友人から聞いた。

彼の名は高井徹、にっかつの同期生であった。


さすがに落ち込んだ。

40代前半って、若過ぎるよなぁって。

じつは、あんまり親しくなかった。
訂正、ぜんぜん親しくなかった。

イケてない男子はヒクツなイキモノである。
イケてる男子はきっと、自分のようなヤツなんか眼中にないんだろう、、、と思っている。

けれども。
高井くんはある日、ほとんど会話をしたことがない自分に向かって「おはよう、まっき~!」とあいさつをしてくれたんだ。

これを「馴れ馴れしい」と解釈するほど、自分はヘンクツではない。
繰り返すがヘンクツではなくヒクツであり、だから「あぁ高井くんが、自分を愛称で呼んでくれた♪」と、ちょっとうれしかった。

高井くんとの思い出は、じつはこのくらいである。
それと冒頭に記したように、美人と登校してくる図。

自分にとって、完璧なイケてる男子として記憶に残っている。

…………………………………………

病死と聞いただけで、くわしいことは分からない。


さすがにきのうは、寝つけなかった。
さっきフェイスブックを覗いて、自分の誕生日と1週間ちがいだったことに気づく。

あすが誕生日だった。
だから享年40歳、自分より若いまんまで死んでしまった。


夢なかばだったろうな…と、思う。


最期は、どんな感じだったのだろうか。

苦しかったに決まっている。
決まっているが、強引にでも、イケてる最期だったと思いたい。


合掌。

向こうの世界でも、イケてる感じでお願いします、高井くん。


※イケてない自分は、当時、この曲を狂ったように聴いていた




…………………………………………

本館『「はったり」で、いこうぜ!!』

…………………………………………

明日のコラムは・・・

『初体験 リッジモント・ハイ(113)』

コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする