「いいよなー、羨ましいよな」
と、隣りで煙草を吸うクラスメイトはいった。
「なにが?」
「べつに格好よくもないのにさ、あんな風に可愛い子と二人乗りで登校してきて」
「モノがちがうんだよ、たぶん」
「チンコがでかいってこと?」
「(笑う)そうはいってないけど。内面かもしれんし」
…………………………………………
専門学校時代の話である。
校舎のベランダで煙草を吸う、イケてない映画小僧3人。
家に居てもやることがないので、かなり早めに登校し、ベランダで煙草を吸いながら、ほかの生徒たちの登校風景を眺めるのが日課になっていた。
たしかにTくんは格好よくはない。
甘く採点しても、中の上といったところか。
しかし一緒に登校してくる彼女Iちゃんは上の上、つまり極上だった。
なんで? とは思ったが、自分はべつの子を好いていたから、羨ましいとまでは思わなかった。
(しつこいようだが)Tくんは格好よくはなかった。
しかし、いまのことばでいえば完全にイケていた。
つまり、よくある構図である。
イケてる男子を、同性が妬んでいると。
ところで。
イケてる男子のダサい瞬間を見て「ざまあ!」と思うイケてない男子も居るようだが、自分はその逆だ。
イケてる男子には、常にイケてる感じていてほしい。
コケたときでさえ、イケてる感じで。
嘔吐したときも。
射精したときの顔も。
中年になってハゲたり太ったりしては、もちろんいけない。
ある意味では憧れているのだから、いついかなるときでも気を抜かないでほしいんだ。
だから自分は中学の同窓会が開かれたとき、スポーツ万能でモテモテだったはずの石川くんが「ちょっとダサい感じ」になっていたことに愕然とし、本人にマジで説教をした。
「なにやってんの石川くん、こんなところで酒を呑んでいる場合じゃない。運動して、そのビールっ腹をなんとかしてよ!」
周囲も石川くんも笑ったが、いやいや、こっちはジョークなんかじゃなかったんだ。
さらにいえば。
イケてる男子は、死ぬときもイケてなきゃいけない。
『太陽にほえろ!』の、松田優作のように。
…………………………………………
きのう、Tくんの死を友人から聞いた。
彼の名は高井徹、にっかつの同期生であった。
さすがに落ち込んだ。
40代前半って、若過ぎるよなぁって。
じつは、あんまり親しくなかった。
訂正、ぜんぜん親しくなかった。
イケてない男子はヒクツなイキモノである。
イケてる男子はきっと、自分のようなヤツなんか眼中にないんだろう、、、と思っている。
けれども。
高井くんはある日、ほとんど会話をしたことがない自分に向かって「おはよう、まっき~!」とあいさつをしてくれたんだ。
これを「馴れ馴れしい」と解釈するほど、自分はヘンクツではない。
繰り返すがヘンクツではなくヒクツであり、だから「あぁ高井くんが、自分を愛称で呼んでくれた♪」と、ちょっとうれしかった。
高井くんとの思い出は、じつはこのくらいである。
それと冒頭に記したように、美人と登校してくる図。
自分にとって、完璧なイケてる男子として記憶に残っている。
…………………………………………
病死と聞いただけで、くわしいことは分からない。
さすがにきのうは、寝つけなかった。
さっきフェイスブックを覗いて、自分の誕生日と1週間ちがいだったことに気づく。
あすが誕生日だった。
だから享年40歳、自分より若いまんまで死んでしまった。
夢なかばだったろうな…と、思う。
最期は、どんな感じだったのだろうか。
苦しかったに決まっている。
決まっているが、強引にでも、イケてる最期だったと思いたい。
合掌。
向こうの世界でも、イケてる感じでお願いします、高井くん。
※イケてない自分は、当時、この曲を狂ったように聴いていた
…………………………………………
本館『「はったり」で、いこうぜ!!』
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明日のコラムは・・・
『初体験 リッジモント・ハイ(113)』
と、隣りで煙草を吸うクラスメイトはいった。
「なにが?」
「べつに格好よくもないのにさ、あんな風に可愛い子と二人乗りで登校してきて」
「モノがちがうんだよ、たぶん」
「チンコがでかいってこと?」
「(笑う)そうはいってないけど。内面かもしれんし」
…………………………………………
専門学校時代の話である。
校舎のベランダで煙草を吸う、イケてない映画小僧3人。
家に居てもやることがないので、かなり早めに登校し、ベランダで煙草を吸いながら、ほかの生徒たちの登校風景を眺めるのが日課になっていた。
たしかにTくんは格好よくはない。
甘く採点しても、中の上といったところか。
しかし一緒に登校してくる彼女Iちゃんは上の上、つまり極上だった。
なんで? とは思ったが、自分はべつの子を好いていたから、羨ましいとまでは思わなかった。
(しつこいようだが)Tくんは格好よくはなかった。
しかし、いまのことばでいえば完全にイケていた。
つまり、よくある構図である。
イケてる男子を、同性が妬んでいると。
ところで。
イケてる男子のダサい瞬間を見て「ざまあ!」と思うイケてない男子も居るようだが、自分はその逆だ。
イケてる男子には、常にイケてる感じていてほしい。
コケたときでさえ、イケてる感じで。
嘔吐したときも。
射精したときの顔も。
中年になってハゲたり太ったりしては、もちろんいけない。
ある意味では憧れているのだから、いついかなるときでも気を抜かないでほしいんだ。
だから自分は中学の同窓会が開かれたとき、スポーツ万能でモテモテだったはずの石川くんが「ちょっとダサい感じ」になっていたことに愕然とし、本人にマジで説教をした。
「なにやってんの石川くん、こんなところで酒を呑んでいる場合じゃない。運動して、そのビールっ腹をなんとかしてよ!」
周囲も石川くんも笑ったが、いやいや、こっちはジョークなんかじゃなかったんだ。
さらにいえば。
イケてる男子は、死ぬときもイケてなきゃいけない。
『太陽にほえろ!』の、松田優作のように。
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きのう、Tくんの死を友人から聞いた。
彼の名は高井徹、にっかつの同期生であった。
さすがに落ち込んだ。
40代前半って、若過ぎるよなぁって。
じつは、あんまり親しくなかった。
訂正、ぜんぜん親しくなかった。
イケてない男子はヒクツなイキモノである。
イケてる男子はきっと、自分のようなヤツなんか眼中にないんだろう、、、と思っている。
けれども。
高井くんはある日、ほとんど会話をしたことがない自分に向かって「おはよう、まっき~!」とあいさつをしてくれたんだ。
これを「馴れ馴れしい」と解釈するほど、自分はヘンクツではない。
繰り返すがヘンクツではなくヒクツであり、だから「あぁ高井くんが、自分を愛称で呼んでくれた♪」と、ちょっとうれしかった。
高井くんとの思い出は、じつはこのくらいである。
それと冒頭に記したように、美人と登校してくる図。
自分にとって、完璧なイケてる男子として記憶に残っている。
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病死と聞いただけで、くわしいことは分からない。
さすがにきのうは、寝つけなかった。
さっきフェイスブックを覗いて、自分の誕生日と1週間ちがいだったことに気づく。
あすが誕生日だった。
だから享年40歳、自分より若いまんまで死んでしまった。
夢なかばだったろうな…と、思う。
最期は、どんな感じだったのだろうか。
苦しかったに決まっている。
決まっているが、強引にでも、イケてる最期だったと思いたい。
合掌。
向こうの世界でも、イケてる感じでお願いします、高井くん。
※イケてない自分は、当時、この曲を狂ったように聴いていた
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本館『「はったり」で、いこうぜ!!』
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明日のコラムは・・・
『初体験 リッジモント・ハイ(113)』