私服保安をやっていた―というと、なかなかに珍しがられて、いろいろ聞かれることが多い。
最も多く聞かれるのが、
「どうやって声をかけるの?」である。
窃盗のケース。
性別や年齢によって多少の変化をつけるが、基本は「分かりますよね?」と話しかける。
これで7割の窃盗犯は「…すいません」と答えてくれる。
残り3割のうち半分がとぼけ、半分が逃げ出す。
とぼけたら強い口調で「分からない? ほんとう?」と繰り返し、逃げ出したら、もちろん追いかける。
痴漢・盗撮のケース。
窃盗は店を出るまで捕捉出来ないが、痴漢や盗撮は犯行を確認した「その場」で捕捉が可能なので逃げ出される危険は少ない。
少ないが、本人も窃盗より恥ずかしいという自覚があるようで、素直に「御用になる」ヤツは稀、大抵は強く否定したり、捕捉に抵抗する。
周囲にひとが居るというのも「正直になれない?」要因のひとつだろう。
だから自分なんかは、「よぉ、久し振り~」と声をかけながら男の肩に手を回し、柔道技なんかを駆使しつつ、人通りの少ない「隅っこ」あたりに移動してから話を進める。
そうすれば割と正直に、罪を認めてくれる(ことが多かった)。
きのう書いた痴漢の処理も、まさにそんな感じであったと。
つまり。
自分は、声かけには慣れている。
ナンパ師やスカウトマンには負けるかもしれないが、他者に対して、割と自然に声をかけることが出来るほうだと思う。
そういう経験があるものだから、余計にこう思っていた。
痴漢の被害に遭っている子は、なんで声を出さないんだろうって。
加害者に直接いわなくてもいい、周囲に「痴漢が居る!」っていってくれれば、きっと誰かが助けてくれるって、、、と。
しかし。
20代後半のころの話―。
新宿から京王線(快速)に乗って、自宅最寄りとなる多摩センター駅まで向かっていたときのこと。
いつものようにドア付近に立っていると、紙袋を持つジジイが自分に近寄ってきた。
あ、このジジイの定位置があるのかなと思い、少し移動する。
するとジジイも少しだけ移動し、自分の横で動作を止めた。
混雑・・・しているわけでもなかった。
だから、なんだこのジジイ? と思ったが、無視することに決めた。
ちょっと臭いのが、気になったけれども。
明大前あたりで、異変に気づく。
ジジイは紙袋を自分の股間あたりに持ってきて―つまりそれで周囲に見えないようにして―もう片方の手で自分のちんちんを触り始めたのである。
!!!!!
まさか!
俺なのか?
この俺でいいのか!? という疑問。
さらにいえば、間違っても勃起してはいけないという緊張。
動揺した自分は、千歳烏山あたりで隣りの車両に移動してみた。
するとジジイは、自分のあとを追ってやってきたのである。
ここで確信した、あぁコイツは痴漢なのだと。
って、おせーよ気づくのが!!
再びちんちんをまさぐり始めるジジイ。
勃起してはならぬと深呼吸する自分。
いやちょっと待て、おかしくないか自分の態度は? と。
ふだん思っていたわけでしょう、女子は声を出せばいいと。
けれども。
なぜか、声が出ないのである。
耐え難きを耐え、忍び難きを忍ぶ数十分―。
結局、自分は約40分間ものあいだ、キチガイジジイに触りつづけられたのであった。
・・・・・・・・・思考停止・・・・・・・・・
大事ななにかを失った気分、、、とまでいうと大袈裟だが、その立場になってみないと分からないものだなぁ、などと思った。
まぁ、いまだったらそんなこともなく、仮に被害者になったとしても蹴ったり殴ったり触り返したり勃起したり出来そうだが、あのころはまだガキ? だったものでねぇ。
以上、気持ち悪くてくだらない、自分の痴漢被害エピソードでした。
※くるりで、赤い電車
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本館『「はったり」で、いこうぜ!!』
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明日のコラムは・・・
『空き缶を、噛み切れますか』
最も多く聞かれるのが、
「どうやって声をかけるの?」である。
窃盗のケース。
性別や年齢によって多少の変化をつけるが、基本は「分かりますよね?」と話しかける。
これで7割の窃盗犯は「…すいません」と答えてくれる。
残り3割のうち半分がとぼけ、半分が逃げ出す。
とぼけたら強い口調で「分からない? ほんとう?」と繰り返し、逃げ出したら、もちろん追いかける。
痴漢・盗撮のケース。
窃盗は店を出るまで捕捉出来ないが、痴漢や盗撮は犯行を確認した「その場」で捕捉が可能なので逃げ出される危険は少ない。
少ないが、本人も窃盗より恥ずかしいという自覚があるようで、素直に「御用になる」ヤツは稀、大抵は強く否定したり、捕捉に抵抗する。
周囲にひとが居るというのも「正直になれない?」要因のひとつだろう。
だから自分なんかは、「よぉ、久し振り~」と声をかけながら男の肩に手を回し、柔道技なんかを駆使しつつ、人通りの少ない「隅っこ」あたりに移動してから話を進める。
そうすれば割と正直に、罪を認めてくれる(ことが多かった)。
きのう書いた痴漢の処理も、まさにそんな感じであったと。
つまり。
自分は、声かけには慣れている。
ナンパ師やスカウトマンには負けるかもしれないが、他者に対して、割と自然に声をかけることが出来るほうだと思う。
そういう経験があるものだから、余計にこう思っていた。
痴漢の被害に遭っている子は、なんで声を出さないんだろうって。
加害者に直接いわなくてもいい、周囲に「痴漢が居る!」っていってくれれば、きっと誰かが助けてくれるって、、、と。
しかし。
20代後半のころの話―。
新宿から京王線(快速)に乗って、自宅最寄りとなる多摩センター駅まで向かっていたときのこと。
いつものようにドア付近に立っていると、紙袋を持つジジイが自分に近寄ってきた。
あ、このジジイの定位置があるのかなと思い、少し移動する。
するとジジイも少しだけ移動し、自分の横で動作を止めた。
混雑・・・しているわけでもなかった。
だから、なんだこのジジイ? と思ったが、無視することに決めた。
ちょっと臭いのが、気になったけれども。
明大前あたりで、異変に気づく。
ジジイは紙袋を自分の股間あたりに持ってきて―つまりそれで周囲に見えないようにして―もう片方の手で自分のちんちんを触り始めたのである。
!!!!!
まさか!
俺なのか?
この俺でいいのか!? という疑問。
さらにいえば、間違っても勃起してはいけないという緊張。
動揺した自分は、千歳烏山あたりで隣りの車両に移動してみた。
するとジジイは、自分のあとを追ってやってきたのである。
ここで確信した、あぁコイツは痴漢なのだと。
って、おせーよ気づくのが!!
再びちんちんをまさぐり始めるジジイ。
勃起してはならぬと深呼吸する自分。
いやちょっと待て、おかしくないか自分の態度は? と。
ふだん思っていたわけでしょう、女子は声を出せばいいと。
けれども。
なぜか、声が出ないのである。
耐え難きを耐え、忍び難きを忍ぶ数十分―。
結局、自分は約40分間ものあいだ、キチガイジジイに触りつづけられたのであった。
・・・・・・・・・思考停止・・・・・・・・・
大事ななにかを失った気分、、、とまでいうと大袈裟だが、その立場になってみないと分からないものだなぁ、などと思った。
まぁ、いまだったらそんなこともなく、仮に被害者になったとしても蹴ったり殴ったり触り返したり勃起したり出来そうだが、あのころはまだガキ? だったものでねぇ。
以上、気持ち悪くてくだらない、自分の痴漢被害エピソードでした。
※くるりで、赤い電車
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本館『「はったり」で、いこうぜ!!』
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明日のコラムは・・・
『空き缶を、噛み切れますか』