小学生のころ、父親が買ってくれた「子どものための伝記物語」が好きで、繰り返し読んでいた。
エジソンやキュリー夫人、ベートーベンなどなど。
二重苦・三重苦をものともしない偉人たちの生涯に光を当て、道徳的な効果を狙うという点で、まさに子ども向けだったと思う。
自分が20歳のころだったか、批評家の福田和也が雑誌『ダ・ヴィンチ』(メディアファクトリー)で、『ろくでなしの詩』という連載を始めた。
コピーは、「あらゆる作家は、いずれかの面でろくでなしであった」。
世界の文豪の「文豪ではない」一面を取り上げて、「じつはこんなにひどいヤツだった。ある意味では、ほとんど犯罪者だ」といい切っていく批評に感銘を受け、
これだよ、これ! 小学生にはまだ早いが、高校生や大学生になったら、過去に学んだ偉人の「べつの側面」に触れる―そういう機会を与えないと!! などと、エラソーに思ったものである。
伝記映画というものは、数的にそれほど多くはないものの、毎年必ず「誰かの伝記が」制作されていくという点で、もう立派な一大ジャンルといえると思う。
伝記映画の個人的な3傑は、以下のようになる。
史上最低の映画を創ったとされる映画監督、エドワード・ウッド・ジュニアを描いた『エド・ウッド』(94)、
ピカソを付き合った女から捉え直した『サバイビング・ピカソ』(96)、
「そっくりさん」を発見した時点で80%の成功は約束されていた『ガンジー』(82)。
そこできょうは、このひとの伝記映画を観たいな、偉人伝ではなく、表も裏もきっちり描いた深いドラマを観たいな―と個人的に考えている10人を選んでみた。
※すでに伝記が創られている人物も含まれる。
つまり自分が、その伝記映画を気に入っていない、、、ということ。
※※存命のひとも含まれる
(1)伊能忠敬
実測によって日本地図を完成させた苦労人の物語は、すでに加藤剛の主演で映画化されている。
されているが、いかにも真面目過ぎる。
どうかしている狂人の物語、という視点で創ったほうが面白いはずよね。
(2)エリア・カザン
死してなお、赤狩りの協力者として批判を受けつづける名監督の、光と影の物語。
スコセッシに撮ってほしいかな。
(3)フョードル・ドストエフスキー
福田和也曰く「賭博好きの強姦魔―彼が隣人になったら、あなたは引っ越すべきだ」。
世界の文豪は、じつはそのくらい破綻した日常を送っていたようだ。
マーロン・ブランドに演じてほしかった。
(4)加藤鷹…トップ画像
日本が誇るAV男優。
描きかたによっては、『ブギーナイツ』(97)を超えるかもしれない。
(5)チャールズ・チャップリン
『ガンジー』を撮ったアッテンボローが伝記を制作しているが、冗談? かと疑うほどに中身がスカスカだったので。
演じたロバート・ダウニーが素晴らしかっただけに、なんかいろいろ残念だった。
(6)アンディ・フグ
白血病により35歳で急逝した格闘家。
病気には焦点を当てず「世界の格闘技の変遷」とリンクするような物語にしてほしい。
(7)岡田有希子
好きでも嫌いでもなかったが、当時、アイドルの投身自死というのは「そーとー」なインパクトがあった。
日本のアイドル史と絡めて描けば、優れた文化論が展開出来そう。
(8)ジョージ・フォアマン
ボクサーから牧師に転じた、不運の男。
モハメド・アリによる「キンシャサの奇跡」の相手役として有名だが、あの試合のあと、彼が精神を病んでしまったことは、あまり知られていない。
アリの映画ばかり創られるので、そろそろフォアマンの物語も語られるべきだろう。
(9)アンディ・ウォーホール
脇役としては多くの映画に登場するものの、彼の生涯ときっちり向き合った映画は未だ制作されていない。
これほどのひとなのに、じつに不思議。
(10)岡崎京子
90年代を駆け抜けた漫画家。
交通事故に遭い、漫画を描けない身体になってしまったが、彼女の物語から90年代の日本というものが見えてくる、、、ような気がする。
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本館『「はったり」で、いこうぜ!!』
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明日のコラムは・・・
『この原作を映画化してほしい』
エジソンやキュリー夫人、ベートーベンなどなど。
二重苦・三重苦をものともしない偉人たちの生涯に光を当て、道徳的な効果を狙うという点で、まさに子ども向けだったと思う。
自分が20歳のころだったか、批評家の福田和也が雑誌『ダ・ヴィンチ』(メディアファクトリー)で、『ろくでなしの詩』という連載を始めた。
コピーは、「あらゆる作家は、いずれかの面でろくでなしであった」。
世界の文豪の「文豪ではない」一面を取り上げて、「じつはこんなにひどいヤツだった。ある意味では、ほとんど犯罪者だ」といい切っていく批評に感銘を受け、
これだよ、これ! 小学生にはまだ早いが、高校生や大学生になったら、過去に学んだ偉人の「べつの側面」に触れる―そういう機会を与えないと!! などと、エラソーに思ったものである。
伝記映画というものは、数的にそれほど多くはないものの、毎年必ず「誰かの伝記が」制作されていくという点で、もう立派な一大ジャンルといえると思う。
伝記映画の個人的な3傑は、以下のようになる。
史上最低の映画を創ったとされる映画監督、エドワード・ウッド・ジュニアを描いた『エド・ウッド』(94)、
ピカソを付き合った女から捉え直した『サバイビング・ピカソ』(96)、
「そっくりさん」を発見した時点で80%の成功は約束されていた『ガンジー』(82)。
そこできょうは、このひとの伝記映画を観たいな、偉人伝ではなく、表も裏もきっちり描いた深いドラマを観たいな―と個人的に考えている10人を選んでみた。
※すでに伝記が創られている人物も含まれる。
つまり自分が、その伝記映画を気に入っていない、、、ということ。
※※存命のひとも含まれる
(1)伊能忠敬
実測によって日本地図を完成させた苦労人の物語は、すでに加藤剛の主演で映画化されている。
されているが、いかにも真面目過ぎる。
どうかしている狂人の物語、という視点で創ったほうが面白いはずよね。
(2)エリア・カザン
死してなお、赤狩りの協力者として批判を受けつづける名監督の、光と影の物語。
スコセッシに撮ってほしいかな。
(3)フョードル・ドストエフスキー
福田和也曰く「賭博好きの強姦魔―彼が隣人になったら、あなたは引っ越すべきだ」。
世界の文豪は、じつはそのくらい破綻した日常を送っていたようだ。
マーロン・ブランドに演じてほしかった。
(4)加藤鷹…トップ画像
日本が誇るAV男優。
描きかたによっては、『ブギーナイツ』(97)を超えるかもしれない。
(5)チャールズ・チャップリン
『ガンジー』を撮ったアッテンボローが伝記を制作しているが、冗談? かと疑うほどに中身がスカスカだったので。
演じたロバート・ダウニーが素晴らしかっただけに、なんかいろいろ残念だった。
(6)アンディ・フグ
白血病により35歳で急逝した格闘家。
病気には焦点を当てず「世界の格闘技の変遷」とリンクするような物語にしてほしい。
(7)岡田有希子
好きでも嫌いでもなかったが、当時、アイドルの投身自死というのは「そーとー」なインパクトがあった。
日本のアイドル史と絡めて描けば、優れた文化論が展開出来そう。
(8)ジョージ・フォアマン
ボクサーから牧師に転じた、不運の男。
モハメド・アリによる「キンシャサの奇跡」の相手役として有名だが、あの試合のあと、彼が精神を病んでしまったことは、あまり知られていない。
アリの映画ばかり創られるので、そろそろフォアマンの物語も語られるべきだろう。
(9)アンディ・ウォーホール
脇役としては多くの映画に登場するものの、彼の生涯ときっちり向き合った映画は未だ制作されていない。
これほどのひとなのに、じつに不思議。
(10)岡崎京子
90年代を駆け抜けた漫画家。
交通事故に遭い、漫画を描けない身体になってしまったが、彼女の物語から90年代の日本というものが見えてくる、、、ような気がする。
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本館『「はったり」で、いこうぜ!!』
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明日のコラムは・・・
『この原作を映画化してほしい』