某日―。
公開中のドキュメンタリー映画、『ルック・オブ・サイレンス』を観る。
60年代に起きたとされるカンボジアの大虐殺を「加害者側の視点」で捉えた傑作、『アクト・オブ・キリング』(2012)の姉妹編、、、のような創りの作品。
今回は「被害者側の視点」で捉え直しており、ふたつに触れて、初めてひとつの映画を観終えたという感想を抱いた。
ただ、ドキュメンタリーというジャンル分けがなされてはいるが、感覚としては劇映画にちかい。
映像の向こう側から監督の存在を強く感じるし・・・いやいやこれは批判とかではなく、自分のなかではドキュメンタリーも劇映画のひとつだと捉えているので、これでいいのだと思う。
日本のドキュメンタリー監督に想田和弘というひとが居て、自らの映画を「観察映画」と呼んでいる。
自己主張を一切せず、対象とするものの観察者であり続ける―これが、真の意味におけるドキュメンタリー映画なのだろう。
どっちが正しいとか、良いとか、そういうことじゃなくってね。
ただいえるのは、想田和弘のような監督は珍しく、大抵のドキュメンタリー映画は「そこで起きていることを、そのまま撮る」のではなく、なんらかの演出が加えられているということ。
なんらかの演出とは、編集の場合もあれば、音楽効果の場合もあり、もっと劇映画的なこと―たとえば、撮り直し―をする場合もあるだろう。
そこできょうは、好きなひとはとことん観てくれるが、「興味のないひとは見向きもしない」ドキュメンタリー映画における個人的な10傑を挙げてみたい。
(1)『ゆきゆきて、神軍』(87…トップ画像)
すべての日本映画の頂点に位置する(と、思い込んでいる)自分の生涯のベストワン。
戦争責任を追及し続ける奥崎謙三の毒気を前に、観客はひれ伏すしかないのだ。
(2)『モハメド・アリ かけがえのない日々』(96)
大嫌いな邦題だが、中身は素晴らしい。
アリが神話化されていく過程を、キンシャサの奇跡に絞って描いていく。
敗者のフォアマンにも寄り添おうとする視点が優しい。
(3)『シャイン・ア・ライト』(2008)
スコセッシがローリング・ストーンズのステージを追う。
流麗なカメラワークに酔え! 酔え!! 酔え!!!
(4)『アクト・オブ・キリング』
前述した作品だが、これを観たひとはゼッタイに『ルック・オブ・サイレンス』も観てね!
(5)『人間蒸発』(67)
鬼才イマヘイが仕掛ける、虚構と現実の物語。
映画勉強しようとしているひとは、ゼッタイに観るべきよ。
(6)『A』(98)
森達也がオウム内部を潜入? 取材する。
現在、森監督は某サムラゴウチの騒動を映画化中。
これも楽しみ。
(7)『極私的エロス 恋歌1974』(74)
『ゆきゆきて』の原監督が、自身をハダカにして撮った勇気ある一本。
(8)『コーマン帝国』(2011)
伝説的な映画プロデューサーの無茶苦茶な哲学を、面白おかしく解説してくれる教科書のような映画。
(9)『ボウリング・フォー・コロンバイン』(2002)
いろいろいいたいことはあるが、魅せる・観せるドキュメンタリーとして完成されていると思う。
(10)『ストップ・メイキング・センス』(84)
バンド「トーキング・ヘッズ」のライブを、「映画的演出なし」で撮り切った記録映画。
しかし観終えたあとは、なぜか劇映画を観たという感慨に浸れてしまうのだった。
…………………………………………
本館『「はったり」で、いこうぜ!!』
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明日のコラムは・・・
『雨と汗』
公開中のドキュメンタリー映画、『ルック・オブ・サイレンス』を観る。
60年代に起きたとされるカンボジアの大虐殺を「加害者側の視点」で捉えた傑作、『アクト・オブ・キリング』(2012)の姉妹編、、、のような創りの作品。
今回は「被害者側の視点」で捉え直しており、ふたつに触れて、初めてひとつの映画を観終えたという感想を抱いた。
ただ、ドキュメンタリーというジャンル分けがなされてはいるが、感覚としては劇映画にちかい。
映像の向こう側から監督の存在を強く感じるし・・・いやいやこれは批判とかではなく、自分のなかではドキュメンタリーも劇映画のひとつだと捉えているので、これでいいのだと思う。
日本のドキュメンタリー監督に想田和弘というひとが居て、自らの映画を「観察映画」と呼んでいる。
自己主張を一切せず、対象とするものの観察者であり続ける―これが、真の意味におけるドキュメンタリー映画なのだろう。
どっちが正しいとか、良いとか、そういうことじゃなくってね。
ただいえるのは、想田和弘のような監督は珍しく、大抵のドキュメンタリー映画は「そこで起きていることを、そのまま撮る」のではなく、なんらかの演出が加えられているということ。
なんらかの演出とは、編集の場合もあれば、音楽効果の場合もあり、もっと劇映画的なこと―たとえば、撮り直し―をする場合もあるだろう。
そこできょうは、好きなひとはとことん観てくれるが、「興味のないひとは見向きもしない」ドキュメンタリー映画における個人的な10傑を挙げてみたい。
(1)『ゆきゆきて、神軍』(87…トップ画像)
すべての日本映画の頂点に位置する(と、思い込んでいる)自分の生涯のベストワン。
戦争責任を追及し続ける奥崎謙三の毒気を前に、観客はひれ伏すしかないのだ。
(2)『モハメド・アリ かけがえのない日々』(96)
大嫌いな邦題だが、中身は素晴らしい。
アリが神話化されていく過程を、キンシャサの奇跡に絞って描いていく。
敗者のフォアマンにも寄り添おうとする視点が優しい。
(3)『シャイン・ア・ライト』(2008)
スコセッシがローリング・ストーンズのステージを追う。
流麗なカメラワークに酔え! 酔え!! 酔え!!!
(4)『アクト・オブ・キリング』
前述した作品だが、これを観たひとはゼッタイに『ルック・オブ・サイレンス』も観てね!
(5)『人間蒸発』(67)
鬼才イマヘイが仕掛ける、虚構と現実の物語。
映画勉強しようとしているひとは、ゼッタイに観るべきよ。
(6)『A』(98)
森達也がオウム内部を潜入? 取材する。
現在、森監督は某サムラゴウチの騒動を映画化中。
これも楽しみ。
(7)『極私的エロス 恋歌1974』(74)
『ゆきゆきて』の原監督が、自身をハダカにして撮った勇気ある一本。
(8)『コーマン帝国』(2011)
伝説的な映画プロデューサーの無茶苦茶な哲学を、面白おかしく解説してくれる教科書のような映画。
(9)『ボウリング・フォー・コロンバイン』(2002)
いろいろいいたいことはあるが、魅せる・観せるドキュメンタリーとして完成されていると思う。
(10)『ストップ・メイキング・センス』(84)
バンド「トーキング・ヘッズ」のライブを、「映画的演出なし」で撮り切った記録映画。
しかし観終えたあとは、なぜか劇映画を観たという感慨に浸れてしまうのだった。
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本館『「はったり」で、いこうぜ!!』
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明日のコラムは・・・
『雨と汗』