Cape Fear、in JAPAN

ひとの襟首つかんで「読め!」という、映画偏愛家のサイト。

『Cape Fear』…恐怖の岬、の意。

待つ、ことの快楽(4) ~2017年の映画を総括~

2017-12-05 00:10:00 | コラム
本年度の映画の総括、きょうは最終日。
4つのトピックスから、2017年の映画業界を捉えてみたい。


(1)ハリウッドのセクハラ騒動

海の向こうの話―といっていられないのは、
おそらく、日本でもそういうことが起こっていたであろうと予想出来るから、、、というのもあるが、
「日馬富士」報道などに触れていると、
なにがきっかけで騒動に発展するのか分からない、
そして騒動は起こったが最後、事態はなかなか収束しない、ということが分かり、

とてもじゃないが、楽しんで見ていられない。

すでにハリウッドでは、ワインスタインひとりの問題ではなくなってしまっている。



ケビン・スペイシーは主演ドラマを降板(というかクビにちかい)、
ダスティン・ホフマンは何十年も前の言動に対し謝罪のことばを述べ(時効だといいたいんじゃない、ただ「ダスティン本人が覚えていないであろうこと」を謝罪することに意味があるのか、と疑問には思う)、
ピクサーのジョン・ラセターは責任を取って6ヶ月の休職に入った。

本来であれば12月は、オスカーに向けての賞レースが加速する時期。

それがセクハラ騒動の余波に足元をすくわれ、どうにも盛り上がらない。

ワインスタインがオスカーの常連だったということもあり、この騒動に対し完全スルーを決め込むのはいかにも不自然だろう。
だから授賞式当日、総合司会がなんらかのコメントをするとは思うが、ワインスタインひとりを悪者にすればいいという話ではないし、「これでクリーンになった!」と宣言するには問題が深過ぎて安心出来ない。


世界中の映画ファンは、誰が誰にナニをしたとか、すでに、、、というか、最初から興味がない。

映画の先進国として、どのような態度を取るのか―このことだけに注目しているのだ。

(2)ドゥニ・ヴィルヌーヴ

今年の顔、暗のほうが「ワインスタイン」だとしたら、明はまちがいなく「ドゥニ・ヴィルヌーヴ」だろう。



上半期に『メッセージ』、下半期に『ブレードランナー2049』が公開される。

カナダ出身の50歳。
2000年に発表された『渦』から見巧者には注目されていたけれど、それから17年が経過した今年、やっとのことで日本の映画ファンにもその名が浸透した。

今年の2作に触れると「SFに強い」という印象を受けるかもしれない、
もちろん「弱くはない」だろうが、社会性の強いドラマでも評価を受けている秀才型の映画監督である。

これは断言しておいて構わないだろう、あと5年以内にオスカー監督賞を取りますよ確実に。

(3)日本の学園モノ

わが国では、学園モノが流行中。
といっても、現実を突きつける『桐島~』のような辛辣なドラマではなく、大人の鑑賞に耐え得るものでない、少年少女とくに「少女」を対象とした、甘~~~いドラマというか、コミックスっぽいものが量産されている。



「コミックスっぽいもの」批判ではない。
そういうものがあってもいいし、美男美女を拝むためだけに映画を観てもいいのだが、若い世代が、映画とは「そういうもの=それだけのもの」と理解してもらっては困る、、、というのはある。

いかにもオッサンっぽい考えであることは承知している。

暴飲暴食/偏食をしている自分がいうのもおかしいが、バランスの取れた映画鑑賞に努めてほしい。

これは受け手の問題であるとともに、もちろん創り手の問題でもあるわけで。

いや、とくに後者の問題なのだろう。

(4)企画○年、構想○年

本ブログ及びその前身のブログを遡っていくと、10年前からスコセッシの『沈黙 サイレンス』について「うるさく」書いていることが確認出来る。

いやじつは、それよりも前に呑み会などでは話題にしていた。

そのころの会話は、酔いどれだったはずなのに覚えている。

日本で撮るのかな、
そりゃそうだろう、スコセッシはキューブリックのような出不精ではないのだから、米国にセット組んでこれが日本です! みたいなことはやらないと思う。

とか、

キチジローの役は柄本明だろう、
いや柄本さんはたしかに見事に演じるだろうけれど歳を取り過ぎている、無名の日本人のほうが先入観なく見れていいのではないか。

とか。

度々入ってくる制作ニュースに一喜一憂しながら、それでいて、こころのどこかで諦めかけていたところがある。

黒澤の『天国と地獄』リメイクだって叶わなかったんだ、これも無理じゃないか・・・と。

だが『沈黙 サイレンス』は完成し、今年の1月に日本公開された。

「企画○年、構想○年という惹句のついた映画は、大概はコケる」といった識者が居る。

正直、自分もそんな不安を抱いて『沈黙 サイレンス』に臨んだ。

で、観終わってから「スコセッシさん~、疑ってすいません」と謝りましたよ。


待ちつづけたものが、期待以上のものとして提示された―こんな経験、映画ファンをやってきて初めてだったのだ。


待ちつづけるものだなぁ、、、そう実感した2017年である。





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最後に、あらためて今年の18傑を―。

第01位『哭声/コクソン』
第02位『沈黙 サイレンス』
第03位『彼女の人生は間違いじゃない』
第04位『メッセージ』
第05位『彼女がその名を知らない鳥たち』
第06位『ブレードランナー2049』
第07位『エル ELLE』
第08位『わたしたち』
第09位『ダンケルク』
第10位『ムーンライト』
第11位『光』
第12位『ベイビードライバー』
第13位『猿の惑星:聖戦記』
第14位『アンチポルノ』
第15位『ノクターナル・アニマルズ』
第16位『アウトレイジ 最終章』
第17位『ラ・ラ・ランド』
第18位『ゲット・アウト』

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明日のコラムは・・・

『カレンダーがそろいました』
コメント (1)
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